学術会議任命拒否は疑問

  日本学術会議の会員につき、政府は6名を除外して任命したという。しかも、その理由も明らかにしていないという。同会員は、学術会議の推薦に基づいて総理が任命することになっており、その推薦の意味は重い。それを無視して任命を拒否することは、憲法の趣旨にかんがみて不当であるのみならず、違法の疑いが極めて濃い。

 立法当時の趣旨からしても、政府には任命に関しての自由裁量権はないはずであり、いわば形式的な任命権に過ぎないものだと思われる。加藤官房長官の言によれば、「人事を通じて一定の監督権を行使することは法律的には可能」とのことだ。確かに学術会議は広義の行政組織ではあり、政府による監督がなされるべき分野はあるだろうが、それは会計その他の限られた分野のはずであり、「人事を通じて監督する」ような性格のものではあるまいし、そもそも「監督」という発想自体がことの本質に沿わないものだと思う。

 今回の任命拒否は、憲法を持ち出すまでもなく、違法なものだと思えてならないし、人事を通して影響力を及ぼそうとする政権の極めて危険な性格を物語るものだと言わざるを得ない。

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 以上は、実はこの2日に、朝日新聞の「声」に投稿したものである。その後大分日数も経ったし、その後似たような趣旨の社説や解説も多数掲載されたので、もう出番はあるまいと思い、このブログに載せることにした。投稿後に明らかになったこともいろいろあるが、この投稿の趣旨を変える必要があるようなものでもないので、2日現在の原稿をそのまま載せる。