題詠マラソン秀歌選(過去ログ91〜100)

 暑中お見舞い申し上げます。
 
 今日は広島原爆の日 、いろいろ書きたいこともあるが、今日のところは目をつぶろう。 題詠マラソンの過去ログが、昨夜ようやく100まで来たので、早速91〜100の「秀歌選」をまとめてみた。以前からの繰り返しだが、元来私の独断と偏見に基づくものだし、明確な基準があるわけでもない。今日は少し物差しが甘かったような気がしないでもないし、明日選べば、別の歌になるのかも知れないが、そこは無責任に、思いつきの衝動買いをするしかあるまい。悪しからず。

題詠マラソン秀歌選、過去ログ91〜100

[18408] 001:声 遠山那由 声高く歌えと命じられるから裏声にすらならぬ「君が代
[18945] 004:淡 久松 足早に追い越し行きし異国の乙女は淡き香を残す
[19118] 005:サラダ かとうそのみ サラダ菜の先でくすぐりあうような青春というなまえの話
[19543] 006:時 立花るつ 時の色つかまえたくて筆運ぶ夕焼けが闇に変わる速さで
[18512] 008:鞄 コメット いくつもの不幸な予言取り揃え黒い鞄の保険屋が来る
[19393] 011:都 足立尚計 住めば都と思いてしばし経つ年を憾む土嚢の上に蝶舞う
[18816] 013:焦 コメット 自爆テロの心は何処(いずこ)焦点の合わぬメガネで朝刊を読む
[19395] 013:焦 足立尚計 ドロドロの家具焼く野火に新婚の思い出もまた焦がしつつおり
[18818] 015:友 コメット 糸電話の糸絡まったまま老いてふと思い出すおんな友だち
[18355] 016:たそがれ 村上きわみ たそがれに硬貨いちまい握りしめ誰のものでもない声を買う
[18336] 016:たそがれ ももか ときどきはたそがれどきを歩きたいきょうもひとりでいる台所
[19695] 020:楽 千坂麻緒 くいくいと白楽天を友としてすすむ酔いから歌がこぼれる
[19915] 020:楽 久松  楽園に穀物刈れるこの墓の主夫妻の壁画やさしき
[19859] 026:蜘蛛 千坂麻緒 悩ましい思いは告げずゆっくりと糸をつむいでゆく蜘蛛になる
[18103] 028:母 笠井烏子 枕辺に港小雨が降るように養母が愛したひばりを唄う
[19447] 028:母 岩崎一恵 蓮の葉の波打つ真昼 在りし日の母が日傘をくるくるまわす
[18122] 030:橋 水須ゆき子 橋姫は待つ女ゆえ鬼となる美しからむ鬼に降る花
[18287] 033:魚 水須ゆき子 あたたかい海の魚のふりをする けんか別れのベッドは広い
[19891] 038:横浜 小林看空 まぼろしの少女横浜追ひかけて赤いくついくつ青いくついくつ
[18158] 041:迷 久哲 しばらくは迷うふりして結局は買わないためのバーゲンセール
[19650] 043:馬 美作直哉 見せるほど馬脚もなくて係長止まりのあいつの愛妻弁当
[19610] 044:香 ゆか 香りという美しき音に程遠く加齢臭など説かれておりぬ
[18070] 044:香 和良珠子 封切りのピース一缶ぶちまけて逝ける父への送り香とする
[18883] 044:香 水須ゆき子 移り香をとがめるほどの熱もなくミネラル麦茶を注ぎ足す夜更け
[19213] 050:変 水須ゆき子 変なところばかり似ている父と子の巻き爪 雨を聴きながら切る
[19423] 052:螺旋 茶琥チヤ子 千年の時間(とき)の螺旋を巡り来て采女の祈り勾玉に満つ
[19764] 054:靴下 内田かおり 夕べより編み始めたる靴下の毛糸の綾が母を絡める
[19231] 055:ラーメン 茶琥チヤ子 こいさんが待つこともない法善寺ラーメン店は今日も行列
[19561] 055:ラーメン 和良珠子 頑なに支那蕎麦と呼ぶ父のためチキンラーメンぐつぐつと煮る
[18326] 056:松 高澤志帆 松明がてらす神楽の少女から飛びたつ影が闇に消えたり
[18716] 056:松  ももか 注連縄の張直されし菊日和夫婦岩には松の傾き
[18546] 057:制服 飛鳥川いるか 運転士の白き制服着たるとき父は清しき猛禽となる
[18532] 057:制服 紫峯 制服が遺品となりし慟哭に夏の夜の風 南から来る
[19829] 057:制服 内田かおり 制服の若者達の大群が歩道をはみ出す八時七分
[18476] 058:剣 雪之進 朝市を仕舞えて呼子の海も凪 剣先烏賊刺つるりつるりと
[19834] 062:風邪 内田かおり 風邪の子を置きて出勤せし母は電話の音にまたも振り向く
[18900] 063:鬼 雪之進 鬼の子も雷の子もざぶざぶと洗ってやりたし梅雨明けの朝
[19185] 066:消 林 ゆみ 亡くなった友の住所を手帳から消せないままにまた盆が来る
[18841] 067:スーツ  ももか 肩書きは専業主婦のほかに無くついに持たざる求職スーツ
[19223] 068:四 宵月冴音 その庭に四季の花あり高原台風待ち通りのカフェルノワール
[18140] 069:花束 三宅やよい 終電に百合の花束置き忘れようやく終る父の長き日
[18094] 070:曲 上澄眠 すこしだけつくえが曲がっているような気がいつまでもする本試験
[19883] 070:曲 内田かおり 取り立てて言う程もない道だけどそろそろ曲がり角だと思う
[19804] 070:曲 林 ゆみ どの角を曲がり損ねてしまったか愛され方が分からずにいる
[18891] 071:次元 飛鳥川いるか 二次元の美少女たちを閉ぢ込むるDVDの虹色の照り
[18412] 072:インク 五十嵐きよみ 青インク吸わせてみたくて買ってきた一輪の百合はや持て余す
[18723] 073:額 上澄眠 半額の値札を外すまだすこしあまいにおいの雨の駅ビル
[19288] 074:麻酔 紫峯 きれぎれの言葉つなげて麻酔から覚めたばかりの瞳が語る
[18725] 075:続 上澄眠 赤い糸もつれさせつついつまでも二人続けるあやとり遊び
[18603] 077:櫛 みあ またひとつ櫛の歯が欠け隙間から三日月の夜するんと落ちる
[18604] 078:携帯 みあ 携帯が蒼く光ればわたくしも光りはじめる真夜中の繭
[18958] 078:携帯 飛鳥川いるか ふるさとの訛りなくして嘘ばかり携帯電話に捨てる・新宿
[18772] 080:書 みあ リサイクルショップに並ぶ車椅子 背シートに書くなまえ消されて
[18961] 082:罠 丸井真希 寂しさもひとつの罠になりそうで夜の10時に電話を掛ける
[19507] 091:暖 川内青泉 炭燃やし石火鉢にて暖取りし小学校の古き教室
[19438] 092:届 飛鳥川いるか 黒々と各種届の贄となる「世田谷 太郎」の渡世やいかに
[19122] 093:ナイフ 今泉洋子 ナイフより鋭き言葉忘れ得ず今宵は燗を熱くつけやう
[17986] 097:静 野良ゆうき 静寂はいつも唐突 セミの声 朝の太陽 止まった電車
[19853] 097:静 飛鳥川いるか 繕へぬほころびとして静かなりビルのあはひの原爆ドーム
[18797] 099:動 伊波虎英 微動だにせぬ雲の峰 産院の脇のポストに歌稿を投ず