題詠2012選歌集(その22)

      選歌集・その22

004:果(142〜166)
(蜂田 聞)おざなりにすれば結果も知れたもの誰が言ったか器用貧乏
(sei)赤き実を口にふふめば階段を駆け下りてゆくわたしにもどる
005:点(139〜163)
(杜崎アオ)点在するあなたをあつめながらゆく海のうえには往路しかない
006:時代(129〜154)
(朱李)積み重ね愛し哀しと夜が明けて時代は変わりなにも変わらず
(ワンコ山田) 君からの未知のことばを検索の窓に埋め込む時代に生きて
(村木美月)山積みの課題をひょいと蹴飛ばして少女時代のリズムにのせる
(sei) いつの日も時代を憂ふものありてただひたすらに愛はかがよふ
014:偉(103〜128)
(杜崎アオ)永遠をもとめてふいにまるくなる開封済みの偉人のことば
佐藤紀子)偉かりし友らそれぞれ退職し孫の話に目を細めたり
021:示(79〜103)
(梅田啓子)あの人がその人となる 歳月はわたしの心の置き処(ど)を示す
048:謎(26〜50)
(たつかわ梨凰)様々な謎を包んだ貝となりあなたは深い海に沈んだ
(ゆこ)母からのメールはいつも謎解きで打ち間違いも噛み噛みだらけ
096:拭(1〜25)
(映子)面はずし 笑む手拭の剣士いて   白き照明 なお美しく
(みずき)イメージを払拭したき鏡台に映る明日の素顔、寒紅
(流川透明)空に手を振っているのか窓を拭く後ろ姿に哀しい予感
(はこべ)窓ガラス拭く方法を学校で教えられたる我らが世代
097:尾(1〜25)
(蓮野 唯)叶うなら獣となって貴方乗せ尾を打ち振って駆けて行きたい
(紫苑)人波の絶へてひさしき夕ぐれに尾花をわたるはつ秋の風
(たつかわ梨凰)紅のドレスを水に揺らめかせ金魚は尾びれに微熱宿せり
098:激(1〜25)
(みずき)激動の時代を生きて墳墓たる父なる海に咲く寒櫻
099:趣(1〜25)
(横雲)凍て風に向かひて揺るる水仙の趣き受けて髪梳る
(蓮野 唯)ゆったりと趣のある所作に酔い貴方の膝で憩うひととき
(紫苑)辛(から)き酒などふくみつつ歌詠めば身体(からだ)の芯に野趣よみがへる
(流川透明)雲に名を付けていくのが趣味と言う付けた端から忘れると言う
(猫丘ひこ乃)野趣溢るジビエ料理が気になってくる頃いつも大雪が降る
(ありくし)憂寂の午にはひるの趣が ぬるい芒果一口喰らう