題詠マラソン選歌(過去ログ12まで)と選歌開始の弁

  題詠マラソンのことは昨日書いた。このブログを作ろうという気になったのは、題詠マラソンの先輩諸氏のブログでさまざまな感想などを読んだせいであり、題詠マラソンが私のブログの産みの親だとも言えそうである。また、よせば良いのに、昨日題詠マラソンのホームページに、ブログ開設のお知らせもしてしまった。そうなると、何かを書かないわけにも行かない。
今日は、題詠マラソンの参加作品中「過去ログ12まで」の中から、私の気に入った作品を載せてみたいと思う。昨日の分類で言えば、歌曲やシャンソンに類するものには「うまいものだなあ、参った参った」というものもあるし、ポップスやロックに類するものには「良く判らないけれど、何となく気分が出ている」というものもある。また、同様に昨日書いた話だが、選者によって好みが大きく違う。これはあくまでも「私の好み」に基づく勝手気まま、かつ、無責任な選歌だし、見落しがある可能性も大いにある。
 実は、最初はもっと沢山のものを選んだのだが、数が多いと「なぜ私の作品が入っていないのか」と選ばれなかった方に怒られても困るので、私としては涙を飲んで「入っていなくて当たり前」と弁解できそうな少ない数に限定した積りである。本当はそれぞれの歌についての感想も書けば良いのだろうが、そうなると私の理解の幼稚さなどを露呈する可能性もあるので、ここでは列挙だけにしておきたい。なお、過去ログ13以降は、また折を見て選んで行きたい。
  「選者」というものを一度やってみたいと思っていたのだが、こうしていざ選ぶとなるとなかなかむずかしいものだ。「美人コンテストの投票は、『自分が美人だと判断した人』にではなく、『みんなが美人だと思いそうだと自分が判断した人』に投票する傾向がある」という話を聞いた記憶があるが、それと多少の共通項があるような気もする。

001:声
[749] 春畑茜  音にさえ母と子のあるさびしさに子音母音を声に鳴らせり
[1120] 青野ことり  呼ぶ声にふり向けばただ風がゆき もの問いたげなミモザが揺れる
[1573] 今泉洋子  声あげて泣くこともなきこの齢星降る村に泪壺買ふ
[1953] 五十嵐きよみ おなじ名の知らない少女を呼ぶ声にふりむくたそがれどきの渋谷に
002色
[780] 風花  幾万の死を飲み込んだ哀しみにアンダマン海は青き色なす
[1918] 華音  春色のつけ爪つけて窓の外雪の逢瀬のにび色の空
[1954] 五十嵐きよみ 他者だけの世界の中へ踏み入れる足の爪から色づいてゆく
[1997] 落合朱美  色めいた噂のひとつも立てたくて週に一度の真紅(あか)き口紅
[2309]: ドール 藍色を多くふくんだ透明な空気が満ちる春の夕暮れ
003 つぼみ
[1219] 落合葉  耳をあてつぼみの鼓動かんじたいまだ春浅い風のない朝
[1344] さよこ  伐られたる桜木荷台に積まれゆく硬きつぼみは路に落として
004:淡
[1902] 今泉洋子  昨夜(よべ)君と酒飲みしこと嘘のごと今日は職場に淡々と会ふ
[2020] 今野よすが  君がため淡く染めたる指先で絶えぬ闇への目隠しをする
005:サラダ
[1045] 方舟  男手に作りしサラダそれぞれに具は大振りに千切られてあり
[1509] 風花  貝殻に果実サラダを盛りながら子が戯れる浜辺眺める
006:時
[2044] 林義子  不恰好な手指は母の置き土産時のしじまにぼんやり見入る
[2201] 黒田康之  この街に今いる人の時計みな全て等しく十二時を指す
008:鞄
[1233] みやちせつこ 新しき鞄を左の手に持ちて右手で空を押し上げてみる
[2380] 島菜穂子  エンリケのカラベル船で出かけよう鞄に白き画用紙いれて
010:線路
[1034] 武田ますみ  線路のない廃線の駅ひたひたと昭和という名の亡霊が来る
[1309] 天藤結香里  片方の線路は草の中に消え妖精たちの棲みかに向かう
011:都
[983] 船坂圭之介  ひとひらの寒に措く霜煌けり都大路は静寂(しじま)に沈む
020:楽
[859] 宮まり  音楽の教科書だけをそっと抜き資源回収にそそくさと出す
021:うたた寝
[1546] 春畑茜  うたた寝の夢よりさめしけざむさや畳にまるくわが影は坐す
023:うさぎ
[1761] 謎野髭男  飼いおりしうさぎは鼬(イタチ)に喰われけり白き毛皮の骸(むくろ)残し      て
027:液体
[1080] 斉藤真伸  液体の風邪薬飲む夜のおわりあの日の嘘の苦味にも似て
032:乾電池
[2261] 謎野髭男 乾電池替えれば唸り小気味よく目覚め促し歯ブラシ回る
034:背中
[2186] 春畑茜  背中にはわが子ひとりをぶらさげて光が丘の春をあゆめる
048:袖
[1142] 斉藤真伸  Yシャツの袖のボタンはとれかけて夜明まぎわの空を見上げる
052:螺旋
[1155] 斉藤真伸  病棟の西に張りだす非常口春は螺旋を描いてのぼる
075:続
[1645] 谷口純子  続くこと厭う気持ちも深層にあれど老舗の柚子味噌を買う
(以上、過去ログ12まで。敬称略)