題詠マラソン選歌(過去ログ13〜20)

乗りかかった船で、昨日の続き、過去ログ13から20までを選歌してみた。前置きは昨日のものと同様なので省略する。なお、むずかしい題で私自身が難航したものについては、選抜の基準が少し甘くなっているかも知れない。

002:色
[2949] 植松大雄/SERENO 水色のハンカチのなかあなたごと忘れてかけてた球根ひとつ   [3010] 近藤かすみ 大空を見上ぐる瞳その数とおなじ数だけある空の色
[3202] 水沢あけび 売り歩く風鈴の音が途切るれば色町に灯の点る白昼
003:つぼみ
[2572] 下川梓 自転車がつぼみを乗せて駆けていく 紺のブレザー帆のようにして
[3086] 雛鳥 ゆっくりとつぼみが開く明日には君との思い出四捨五入する
[3472] 杉山理紀 思い出をひらがなにして眠る夜のつぼみのなかのあなたにさわる
[3781] 植松法子 つぼみ早やほぐれ来たるかきさらぎの丘はミモザの黄に染まりゆく
[3913] 高澤志帆 春のつぼみひらきはじめていつもよりおほくまはれる回転木馬
004:淡
[3647] 村本希理子 友情は淡くしづかに歯を立てていちごみるくを壊す放課後
005:サラダ
[3770] 森屋めぐみ ゆで玉子ふたつ使って贅沢にミモザサラダを作る雛の日
006:時
[3012] 五十嵐きよみ 時差のあるひとたちのいる教室でわたしひとりが草原時間
007:発見
[3295] mamaGON トイレより出ずれば「ばあば発見」とさけぶ2歳児語彙増やしゆく
008:鞄
[2954] ベティ 行き先は「恋」の列車に飛び乗ろう鞄にミモザの香りを詰めて
009:眠
[2561] 鈴木英子 長方形に子らの睡眠 かあさんは正方形三つくらいを眠る
011:都
[2695] 葛城 過ぎ去りし夢の都の数多(あまた)なる西域はるかに砂嵐吹く
[3376] 有田里絵 都会には都会の闇があることに気付き始める終電の後
015:友
[3433] 愛観 似たような道を歩んでいる友が少し煙たい土曜日の午後
[3997] ハナ お弁当一緒に食べるためにだけ友達になる4月始まる
019:アラビア
[2906] 白玉だんご 裏向きの「し」より始まるアラビア語書けば右手のこぶしに消える
023:うさぎ
[3800] ベティ 突き返す指輪の石を嵌め込んであなたの庭に置く雪うさぎ
025:泳
[3634] 岩井聡 約束の水着で君は泳ぎ出すきらめきやまぬ詩語の波間へ
026:蜘蛛
[3486] 風花 海蜘蛛のキラキラ光る尾の糸の真珠の粒を君に捧げる
030:橋
[3532] 黒田康之 吾の行くいたるところに戻橋ルサンチマンの街は雪空
035:禁
[3264] 尾崎弘子 その当時発禁だつたとあとがきに書かれた書物を戻す古書店
036:探偵
[2617] 春畑茜 探偵の肩書などを持つ女(ひと)も紛れておらむ成田午後四時
037:汗
[2618] 春畑茜 いつしらに乳の香失せておさなごの眠れる髪に汗の匂える
040:おとうと
[2857] 葛城 おとうとと呼び来しものは歳長けて我を見下ろしつ小遣いせがむ
045:パズル
[3502] 田貫砧 僕といふジグゾーパズル恋愛のパーツが2、3抜け落ちてゐる
047:大和
[2628] 春畑茜 ゆく春のとりとめのなきさびしさに佐美雄の『大和』机上にひらく
049:ワイン
[3559] 春畑茜 ほの甘く生きてもみたき心地して〈おたるワイン〉の白を選べる
056:松
[3990] 田貫砧 松の這う 田舎の浜の 優しさよ 作務衣の翁の 独り釣りする
061:じゃがいも
[2983] 葛城 ことことと鍋が泡噴くじゃがいもの煮える頃には雪も止みそう
064:科学
[2659] 船坂圭之介 みだらなることに触るるな乙女等よ桜ちらちら舞う科学祭
073:額
[3020] 葛城 病む我れの額にこわごわ触れる手の固きを知ればなお愛おしき
[3609] 謎野髭男 大額を飾る壁なくリトグラフ買い求むまま床に立て置く
076:リズム
[3290] 船坂圭之介 打ち寄する秋の満ち潮遠鳴りのリズムさやかに聞こゆ雨の夜
083:キャベツ
[3043] 葛城 春キャベツいそいそ買い来て鍋の中淡き緑をじんわり煮込む
(過去ログ13〜20、敬称略)