トイレ考(スペース・マガジン)

妙なもので、いざはじめてしまうと、ブログに何か書かないと寝覚めが悪い。今日は来客があったりして夜も遅くなったので、これまた在庫品、「スペース・マガジン」の4月号のものでお茶を濁させて頂きたい。


{愚想管見}   トイレ考                    西中眞二郎

 生活にとってのトイレの重要性は言うまでもあるまい。災害のときなど、トイレが最も緊急な課題だということも良く判る。入る方は半日や一日はどうにかなるとしても、出る方はそうは行かない。家庭内のトイレはそれぞれの家庭にお任せするとして、問題は一般に使用されるトイレなのだが、随分良くなったとは言え、まだまだ気に入らない点も多い。
 新しいビルや新幹線は別として、一般的には、まだ「和式」のものの方が多いようだが、ひところ膝を痛めていた折り、出先の和式トイレに往生した経験がある。また、男性が出先で個室のお世話になるのは腹具合が悪い場合が多いと思うが、和式の場合、注意していてもついつい周囲を汚してしまうこともある。洋式なら、その心配はまずない。「みんなが使うトイレは洋式に」というのが、私のかなり真剣な持論である。
 もっとも、私にも、赤の他人が坐った後の洋式トイレに坐ることに抵抗を感じた時期があった。しかし、考えてみれば、洋式トイレの便座に不潔な部分が直接触れるわけでもないし、最近は気にしないことにしている。「便座シート」なる紙製品が備え付けてある場合も多いが、あれはかえって使い勝手が悪い。特に夏など汗ばんでいると、立ち上がった際シートが皮膚から離れず、かえって気色悪い思いをすることもある。京成電鉄の成田空港往復のスカイライナーのトイレは、ボタンを押すと便座にビニールカバーが出て来る仕組みになっているが、どこまで意味があるかは別として、あれはなかなか気分が良い。
 結構立派なトイレなのに、洋服等を掛けるフックの付いていないものも時折ある。冬場オーバーを着ているときなど、特に困りものである。百円足らずのコストでできることに手を抜くという設置者・管理者の神経はどうにも理解できない。
 駅のトイレ等でトイレットペーパーを備えていない所も多かったが、これは最近大分改善されたようだ。特に、改札口の中のトイレであれば、利用者は「お客様」である。わずかな金額ではあるが、トイレ入口の自動販売機でトイレットペーパーを買うのは、大損をしたような気がしたものだ。
 最近の傾向で気に入らないのは、新幹線で個室が男女別になっているものが出て来たことである。多数の個室がある場合なら男女別は当然だろうが、それぞれ一つずつの新幹線の場合、女性用は空いているのに、その前で延々と待たされる場合がある。女性の心理として、覗かれる心配や音が聞こえることへの抵抗があることは当然だろうが、新幹線の場合、そのような心配はまずないだろう。トイレへの出入りを見られたくないということも判るが、新幹線等の場合は男女別になっていても同じことであり、特に意味があるとも思えない。残る問題は、男性の後に入ったり、自分の後に男性が入ったりすることへの抵抗感なのだろうが、その心情は理解できるとしても、「限りある時間とスペース」を有効利用するためには、その程度のことは我慢して頂いても良いのではないか。目の前に空いているトイレがあるのに、その前でいらいらしながら待つというのはどうにも納得できない。
 たかがトイレ、されどトイレ、考えるべきことはまだまだ多い。
<スペース・マガジン 4月号所載>