題詠マラソン選歌(過去ログ21〜30)

 ちょっと風邪気味で、新しい文章を書き下す意欲もないので、今日のところは、過去ログ21から30につき、題詠マラソンの選歌に戻りたい。他人の歌にばかり目を通していると、自分が作るのがお留守になってしまうような気がしないでもない。(「題詠マラソン」と前置きについては、5月7、8日の欄参照)

001:声
[4922] 高崎れい子 「ピアノのねミからラまでしか息できない」喘息少女は小声で話す
002:色
[4552] 島田久輔 黒板にチョークで書いたサヨナラは色とりどりの旅立ちのうた
[5215] 岩崎一恵 床を這う午後のひかりもおとろえて色鉛筆は散らばったまま
004:淡
[5858] 方丈いほり 雪解けし田んぼの中に淡雪の降り来て野良の仕事始まる
005:サラダ
[5803] 吉田貴美子 最後までサラダを残す少年よ アスパラガスは反り返りたり
006:時
[5566] みあ その時が来るまでまわれ風車こころからから空っぽのまま
007:発見
[5958] 岩崎一恵 未だ発見されぬあまたの星ぼしへ樹々は凍てつく梢を伸ばす
[5105] 青井なつき また一つ大人を刻む儀式終え踏切前で始発見送る
008:鞄
[5650] 西村玲美 静かなるわたつみに吹く風ひとつ鞄の底にしづめて歩む
011:都
[4199] 内田かおり 時々は都市の喧噪懐かしみ窓無き店で珈琲を飲む
014:主義
[4411] 舟橋剛二 主義主張捨てて生きゆく潔さわれにはなくて湯を沸かしおり
016:たそがれ
[5458] みずき たそがれを運ぶ電車の逆光にモディリアーニの女俯く
019:アラビア
[5852] 今泉洋子 アラビアの猫のお話猫好きの母と子の夜はしんしんと雪 
022:弓
[4118] 白玉だんご 力こぶつくれど腕(かいな)やわらかく乙女がひとり弓ひきしぼる
023:うさぎ
[4423] 舟橋剛二 うさぎにはうさぎの夢があるのだろう檻の中からのぞく青空
024:チョコレート
[5542] みやちせつこ チョコレート渡さぬことも愛ならむうつむきがちに二月過ぎたり
027:液体
[5372] 村本希理子 金属が液体として在る哀しさに水銀計は冷たく湿る
030:橋
[5375] 村本希理子 紅茶にてブラウスそめる儚さにわたる鉄橋かすかにゆれる
038:横浜
[5207] ベティ 横浜の匂いが少しする夜ですデンキブランはお嫌いですか
040:おとうと
[4526] 参田三太 おとうとはおさなきままのおとうとで離れてともに齢(よはひ)かさねぬ
045:パズル
[5784] 舟橋剛二 一ピース胸のあたりが足りなくて人は完成されないパズル
050:変
[5791] 舟橋剛二 好きだったコーヒーショップの跡にまだ変われなかった僕たちがいる
061:じゃがいも
[5037] 春畑茜 生(あ)れし地の土の匂いを身に溜めてじゃがいも五つ春をねむれる
067:スーツ
[5739] 蜂田聞 三階にスーツを着たるマネキンが五階にゆけば浴衣着ており
070:曲
[5742] 蜂田聞 あるときは左に曲がり右に折れ幼稚園児が気をつけをする
074:麻酔
[5776] 春畑茜 麻酔より覚めしまなこに見ゆる窓はるのひかりの異界にも似る
085:胸騒ぎ
[4445] 船坂圭之介 信ぜよというかさらなる明日の夜を遠き海(み)鳴りに似る胸騒ぎ
090:薔薇
[5670] 那賀神哲 なけなしの 勇気叩(はた)いて 買ったから 渡す勇気が 無くなった薔薇
092:届
[5683] 那賀神哲 颯爽と お届け物と 笑う君 ドアの向こうに 初雪の降る