荒唐無稽ないくつかの提案(原点に返って検討を)

今日も、とりあえず「硬派」で行こう。1年あまり前に書いた、未公開の雑文である。実は、朝日新聞の「視点」に投稿してボツになったものである。


    荒唐無稽ないくつかの提案・・・・・・原点に立ち返った検討を

 世間の常識や昨今の世相の流れに反する荒唐無稽な話かも知れないが、以下いくつかの問題提起をしてみたい。

金利引上げ
 昨今の超低金利は、家計から国庫や企業への富の移転であり、家計からの富の収奪である。預金が金利を生まないことは、国民の将来に対する不安の大きな要因であり消費低迷の大きな要因ともなっている。景気回復を待つことなく、金融の量的緩和と同時に金利引上げを実施すべきである。金利引上げにより、不安の解消に加えて、消費拡大というプラスの効果も期待できるのではないか。なお、超低金利は、借り手である国や企業のモラルハザードにもつながるものであり、社会正義にも反するものだと思う。

郵政民営化や市町村の無理な合併促進の中止
 郵政民営化や市町村の合併促進は、効率の観点を重視した産物であり、過疎地切捨てにもつながる発想である。わが国の現在は、これまでの蓄積を生かして、むしろ効率一辺倒から脱却すべき時期だとすら思う。そのためには、非効率的な部分を公的部門がある程度抱え込むことによって、国民福祉の向上、地域の活性化、雇用の確保等に寄与する必要がある。公的部門の効率化が、地域の活性化や雇用を無視した企業のリストラと同じであってはならない。

③納税者の選択による地方税の充当
 現在の地方税体系は、人口・収入面から見れば、都会に厚く、田舎に薄いことにならざるを得ない。しかし、都会に住む人にも、多くの場合、育ててくれた故郷があり年老いた両親が居る。納税者の選択により、その地方税納税額の何%かは、その指定する自治体に納付できるようにする。そうすれば、都会と田舎の財政力格差是正にも寄与し、地方の自主財源の確保にも役立つ。現在の「改革」は、都会人の発想が強過ぎる。

④「不法滞在」の外国人滞在の合法化
 現在のわが国は、外国人労働者の存在により維持されている面もあり、これからはそれが更に強まって来ることは必然である。犯罪者に対して厳しく当たることは当然だが、そのためにも、外国人を地下に潜らせないことが肝要であり、難民を含め、一定の緩やかな要件の下で彼等の滞在を合法化し、住民としての権利と義務を確立することが必要である。このことにより、人道面からも雇用面からも好ましい効果を生むし、犯罪の防止のためにもむしろ寄与すると思う。

⑤公務員の天下りの容認
 天下りの画一的な排除は、官庁組織の高齢化・硬直化、あるいは高給窓際族の大量発生を招く原因となり、納税者にとってはかえってマイナスとなる。もちろん天下りによる癒着を排除するための方策は必要だが、官庁組織の活性化、人材の活用、納税者の負担の軽減等、天下りの持つプラスの面の評価も念頭に置く必要がある。私は公務員OBであり、そういった意味では言いにくいセリフではあるが、この意見は公務員OBとしての利害からの意見ではなく、納税者の立場から見た官庁組織のありかたという視点からの意見の積りである。

 限られた紙面で意を尽くせないが、とりあえず以上のような問題提起をしてみたい。もちろん、それぞれにつきさまざまな問題点があることは重々承知の上だが、少なくとも、そのような視点から、原点に立ち返った検討をする価値はあるのではないか。どうも、そのような検討もないままに、現在の「改革」ブームは,各層を問わずあまりに無批判に流されているような気がしてならない。