題詠マラソン選歌(過去ログ61〜70)
一時休業の後、再開のお知らせ
先日書きましたように、都合により本ブログ一時休業を致しておりましたが、また舞い戻って参りましたので、再開させて頂きます。もっとも、どこまで律儀に再開するかはこれからの問題ではありますが・・・・。今後ともよろしくお願い申し上げます。
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本日のところは、とりあえず、[題詠マラソン」の過去ログ61〜70のうち、例によって私の好きな作品の紹介である。
001:声
[12616] Harry 「辛うじて卒業できた」と末の子はいつもの声でぼそりと言へり
002:色
[12728] 紅月みゆき ゆびきりの指切らぬまま一面の菜の花色に遺影は笑ふ
004:淡
[13182] 屋良健一郎 受話器ごし箇条書きにて淡々と語られてゆく会えない理由
006:時
[11981] 白辺いづみ 十六で時が止まりし君の席何かを埋めるように木漏れ日
[12468] 小倉るい 半熟の卵が似合うきみだから22時にはさよならを言う
010:線路
[12682] R 君の住む街へと続く線路には菜の花色の電車が走る
015:友
[12294] 和良珠子 子を持たぬ友といてふと あきらめたものの器を比べる真昼
020:楽
[12607] 高澤志帆 道を訊くためにはひりし我楽多屋ひとなき店に雛と目があふ
021:うたた寝
[13819] 杉山理紀 うたた寝が過ぎれば指の隙間からまばらな夏がちらほらひかる
033:魚
[12278] 今岡悦子 はねる魚を乗せて重りをずらしつつ行商の媼は値段をいへり
[13934] 松山宮崎 魚売り町の噂の長話柿の若葉がいま照り返る
035:禁
[12884] やまもとまき 「ココカラハ立入禁止」の札かかげ今夜も君の隣で眠る
036:探偵
[13383] 前野真左子 猫追ひし探偵ごっこの記憶には独りぼっちの路地の匂ひす
039:紫
[13917] 五十嵐きよみ 紫の下着に緊縛されている胴体だけのマネキンの胸
040:おとうと
[13702] 三宅やよい 水撒いた朝の駅舎とおとうとの髪にはつなつの匂いが宿る
043:馬
[12112] 織田香寿子 杳き日をうつつに暮らすわが姑の脳(なづき)の海馬闇に鎮まる
045:パズル
[12043] 津山 類 十本のバラの花束かかえし日ジグソーパズルの一つなくせり
049:ワイン
[13131] すずめ テーブルの隔たりよりもなお遠いワインに透ける君を呑み干す
051:泣きぼくろ
[12685] ジテンふみお 泣きぼくろがほぼ売り切れのコンビニで君の分だけ買ってきました
[13400] 飛永京 花売りの外国人の泣きぼくろ街の灯りが穢す無患子(むくろじ)
054:靴下
[13849] 野良ゆうき 靴下をぬいだ時点で砂浜の女王になった夏の妖精
055:ラーメン
[13109] ドール トランクのすき間にカップラーメンを押し込み君は英国に発つ
060:影
[12187] 高崎れい子 そばにいてほしくてそつと君の影くるくる丸めてバッグに仕舞ふ
070:曲
[13377] 望月暢孝 偏屈とへそ曲りとはどう違うという話になりて会議は終る
080:書
[13728] はぼき 「幸せの足音がした」そう書いた日記のページ破って捨てる
089:巻
[12930] 武田ますみ 「す」の文字のくるんと巻いたその辺りするするほどけて糸屑となる