続・平成の大合併(スペース・マガジン)

 先日に続いて、スペースマガジンからの転載である。

[愚想管見] 続・平成の大合併                 西中眞二郎

  先月に続いて、今回の合併について、この3月末までに合併の決議がされたものを含め、少し見て行きたい。合併によって、面積の大きな市も多数生まれる。これまでの面積最大の市町村は北海道足寄町の1,408平方キロだったのだが、今回の一連の合併により、岐阜県高山市(周辺の9町村と合併)の2,179(以下いずれも平方キロ)、浜松市浜北市天竜市等9市町村と合併)の1,551、日光市今市市等と合併)の1,449、北見市の1,428がこれを上回ることとなる。高山市の面積は、香川県大阪府の面積を上回り、東京都の面積とほぼ同じレベルであり、県より広い市が誕生するわけである。
  母体となった市町村数で見ると、新潟市豊栄市白根市新津市等と合併)の15市町村をトップとして、上越市の14、浜松市及び今治市(周辺の島等と合併)の12、栗原市宮城県栗原郡の町村が一体となって新しく誕生)、佐渡市両津市はじめ佐渡島全体が合併)、高山市、津市(久居市等と合併)、天草市本渡市牛深市等を母体として天草の過半の町村が合併)の10が大口である。
  前回触れたように、新しい市が129誕生するわけだが、これは、本来5万人を要件としていた市制施行の要件を合併等の場合に限って3万人に緩和するとともに、中心部への人口集中度、都市的職業従事者比率等の市制施行の要件を全く外した特例の産物である。
  一般論として言えば、いささか強引とも見える今回の合併促進には疑問もなしとしないが、それに深入りすることはこの際避けよう。ただ、私が強く疑問を感じているのは、この市制施行の特例である。特例の結果、正規の5万人市と合併特例の3万人市という、いわば2種類の「市」が併存することとなり、「市」というものの性格がはっきりしなくなり、都市としての基盤を欠いた市が多く生まれることが懸念される。また、人口4万人を超えるような大きな町でも単独では「市」になれないのに、人口1万人の町でも三つ合併すれば市になれるというアンバランスが生じる等々の問題があるからである。
  新たに市制を布く129市の人口区分を見ると、人口5万人以上のものが、単独で市制を布いた5市を含めて47、4万人台が36、3万人台が46という状態であり、本来の5万人という市制の要件とはほど遠いものが多い。また、129市のうち、平成7年から12年にかけて人口が増加したものは54市に過ぎず、今後の成長にも大きな不安が残る。
  ところで、新市の母体となる町村のうち人口最大のものを見ると、人口3万人以上が20、2万人台が43、1万5千人以上が43、1万人以上が20、1万人未満が3という状況にあり、本来の5万人市とは大きな隔たりがある。人口2万人前後の町は、これまでは市制とは縁の遠い存在だったのだが、こうしてデータを整理していると、2万人前後の町が結構大きな都市のように見えて来るから不思議である。因みに、母体のうち人口最大の町の人口が1万人を切るのは、山梨県北杜市の母体中最大の長坂町、同様に長崎県西海市西彼町、同県南島原市有家町の3ケースであり、小さな町が合併により人口規模だけ大きくなる典型とも言えそうである。
  田舎育ちの私にとって、「市」への憧れは良く判る。それだけに、いびつな形での「市の誕生」にはなおさら疑問を抱くのだが、せめてこれらの新しい市が、「市」にふさわしい活気のある小都市に成長することを期待して見守って行きたい。
<スペース・マガジン 6月号所収>