題詠マラソン選歌(過去ログ81〜90)

今年も半分過ぎてしまった。気のせいかも知れないが、年齢とともに日の経つのが早くなったような気もする。はじめて参加した題詠マラソンも、折り返し点を過ぎたということだ。昨日も書いたように、完走者が続々出ている結果として、投稿のペースも落ちているようで、過去ログ10個を単位としてまとめている「秀歌選」もピッチが大分落ちて来たが、昨夜やっと過去ログ90という節目まで来たので、過去ログ81〜90につき、例によって勝手気ままな「秀歌選」を載せたい。
 「百人一首」を作ろうという目で見ると、最後の方の題については、まだ「秀歌」の累積が少ないようで、これから尻上がりに充実して来ることを期待したい。

題詠マラソン・過去ログ81〜90>

010:線路 水須ゆき子 子を背負い線路に伏した日もあるとばっちゃんは言う豆をもぎつつ
011:都 杉田加代子 くすぐつたい都会の風が吹くやうに転校生が現はれる朝
011:都 高見里香 京都での思い出話ちぐはぐに湯豆腐のこと紅葉のこと
013:焦 水須ゆき子 迷い来し犬の瞳の焦茶より夜は滲みてわが庭に落つ
013:焦 方丈いほり 子供らは峠三吉読み継ぐに折り鶴焦げた広島の夏
015:友 水須ゆき子 友引の通夜に集いし嫗(おうな)らの黒きエプロンみな新しき
018:教室 水須ゆき子 怪我の子を吸い込むドアの明るさを信じつつ昼の教室を去る
025:泳 水須ゆき子 泳げないひとが指差す澪の黒 月に喚ばれて大潮が来る
030:橋 青山みのり 干満を橋の高さに知らしむる潮の匂いの街に生きおり
032:乾電池 常盤義昌 腕時計ふたりの時を刻むなくしづかに腐蝕する乾電池
033:魚 露稀 もうずっとだぁれもいない金魚鉢 あの夏の色閉じ込めたまま
036:探偵 佐藤理江  「人間を見つめ続ける仕事です。」探偵事務所求人ニュース
039:紫 林ゆみ 紫陽花は「隅田の花火」鉢植えを父に送った六月が行く
042:官僚 篠田美也 夏服を脱ぎつつみづから官僚と呟くときの語尾のあやふさ
043:馬 大隈信勝 変はらざる高田馬場の駅降りて半日の間を十代となる
044:香 篠田美也 沈丁の香の厭はしきゆふぐれは肌痛きまで髪洗ふなり
046:泥 佐藤紀子 泥んこの足を拭ひてやりながら鬼ごつこの首尾こまごまと聴く
047:大和 内田かおり 水無月大和言葉で潤してミヤコワスレを栞に飾る
048:袖 武山千鶴 袖口に隠したタネがのぞいてるお別れ会のにはか手品師
049:ワイン 柳子 夏祭りワインレッドの紅さして今宵かぎりの神輿をかつぐ
049:ワイン 林ゆみ 背を丸めワインレッドのペディキュアを塗る昼下がり 電話はこない
051:泣きぼくろ 五十嵐きよみ 泣きぼくろ似合ってしまった気まずさに思いきり濃く眉墨を引く
053:髪 三宅やよい ドライヤーうわんうわんと髪にあて別れの台詞考えている
054:靴下 五十嵐きよみ 会いたいとメールするのも大袈裟で穿く靴下はみな生乾き
058:剣 前野真左子 この家の剣酢漿(けんかたばみ)の紋染めて実家(さと)より届きぬ子の武者飾り
059:十字 常盤義昌 窓枠の十字を背に映らしめ若き大工は釘ふかく打つ
059:十字 三宅やよい どくだみの十字の花は板塀に輪郭薄き伯母の住む家
060:影 みあ 去っていくものを見つめる影ひとつ 思い出はいつだってしあわせ
063:鬼 萱野芙蓉 鬼棲むといふ樹の下に椎の実とわれを供せば新月にほふ
068:四 暮夜宴 雨粒がshall we dance 演じてる 四角い窓の外はただ雨
069花束 松山宮崎 野の花で花束つくる妹の手伝いをする無口のままに
072:インク 常盤義昌 君に書くつひの手紙となりぬべし 便箋の字のインクが滲む
089:巻 ドール あの人の部屋にいまでもあるはずの漱石全集全十二巻