靖国と国益

  今年の梅雨は空梅雨かと思っていたら、西日本をはじめ、随分激しい雨も降っているようだ。私の郷里の山口県大島郡も豪雨に見舞われ、交通が寸断された地域もあると聞く。皆様の被害が少ないことを祈念している。
 ところで、またまたボツ原稿の再利用。先日朝日新聞の声に投稿したものだが、現在に至っても何の反応もないところを見ると、多分ボツになったのだろうと思い、こちらに載せることにした。

  靖国国益

 靖国を巡っていろいろな議論があるが、その中に「靖国以外にも問題は山積している。靖国で安易な妥協をすれば、日本は外圧に弱いという印象を与えて、国益に反する。」という主張がある。これはおかしいと私は思う。
 国と国との間には、常に利害の衝突があり得る。特に近隣諸国との間ではそうである。そのうち、どの主張を貫き、どの問題について妥協するかという見極めが外交のイロハだと思う。「他の問題」があるからこそ、妥協できるところでは相手の言い分を理解することが必要なのではないか。
 果たして「靖国」はどうなのか。人によって意見は違うだろうが、はっきり言えることは、「靖国」については外国からの指摘を待つまでもなく国内的にも議論が分かれる問題だということ、靖国神社が戦争を美化し若者たちを死地に追いやる機能を果たしたという面を持っていたこと、「侵略」された側からすれば「侵略者」をどう祀るかということは内政干渉だと単純には言い切れない面があること―――等を念頭に置いて判断すべきものであり、小泉内閣の多くの閣僚の姿勢は、総合的なバランス感覚を欠き、その意図に反して「国益」を損なうものだと私は思う。