年金改革法の条文ミス(本当の責任者は誰か)

1年ほど前、国会審議中に年金改革法案の条文ミスが「発見」され、話題を呼んだことがある。そのときに朝日新聞の「声」に投稿し、ボツになったものである。この種の意見はあまり一般性がないし、役所の弁解めいた部分もあるので、多分載らないだろうなと思いつつ、「一言言っておきたい」という気持が先に立って投稿したものだが、案の定ボツになった。

           年金改革法の条文ミスに思う

 年金改革法の法案ミスで、厚生労働省内閣法制局に多数の処分者が出たという。法案作成という最も重要な仕事でミスがあったのだから、処分を受けるのは当然だろう。しかし、より根源にある問題は、なぜそのようなミスが出たのかということである。
 20年以上前に内閣法制局参事官を務めていた私の経験だが、例年1月から3月に掛けての法制局は殺人的な忙しさである。私自身も、日曜祭日返上で、睡眠時間連日4時間程度という生活を2ヶ月くらい続けた記憶がある。政府の最終方針が決まるのが年末で、国会提出を急がされると、どうしてもそうならざるを得ない。それでも、私の場合には、自分で一応納得できる程度の審査を終えるだけの時間はとれたが、今回の年金改革法案も果たしてそうだったのだろうか。年金関係の法律は、通常の法律知識だけではとても理解できないような、複雑怪奇な法律である。現状を知らない者の全く勝手な想像だが、担当者は、その複雑怪奇な法律を大改正するという質量ともに大変な作業に取り組み、時間不足、チェック不足を認識しつつ、政治の流れの中で期限を切られて、やむを得ず見切り発車をせざるを得なかったのではないか。
 ミスをした担当者を処分することは当然として、本当に処分されるべきは、政治の次元で、無理を承知で担当者に時間を与えなかった政府与党の首脳なのではないか。