題詠マラソン秀歌選(過去ログ131〜140)
ゴールが近付いたせいか、題詠マラソンのピッチも随分上がって来た。そうなると秀歌選も結構忙しい。これまでの秀歌選に書き込みをして下さったブロ友の方々も、ほとんど完走されて、「お友達」が減ったのは少々物足りない気がしないでもない。コメント大歓迎ですから、どうかお気兼ねなくお立ち寄り下さい。
題詠マラソン秀歌選・過去ログ131〜140
002:色 光森裕樹 五色だとゆづらぬ異国の友とゐてひとまづためす虹の引き算
003:つぼみ 光森裕樹 まひまひの歩みにあはせ紫陽花のつぼみ垂れゆくそれだけの午後
009:眠 実上祐子 折鶴はレム睡眠の間だけ二人のための伝令となる
009:眠 香山凛志 睡蓮の吐息で眠るあの人をそっと仕舞っておく部屋の鍵
013:焦 五十嵐仁美 言わなくて良いこと言ってしまいそう鍋の焦げつきひたすらこする
015:友 桑原憂太郎 級友にいぢめを受けてゐることを決して認めぬ思春期の自我
015:友 佐藤文香 友という他人の多い一日のおしまいに買う牛すじ煮込み
016:たそがれ 立花るつ ブラインドの隙間に広がるたそがれを業務の終わりと共に遮断す
018:教室 実上祐子 英会話教室に出てぎこちなくRの音を舌でころがす
018:教室 中西のぞみ 巣立ちゆくみなを見送りぽつねんと一人残りて教室を掃く
021:うたた寝 佐藤文香 うら若きアフリカゾウはうたた寝の飼育係を監視しており
026:蜘蛛 阿部定一郎 生まれくる朝を恐がらせぬように夜明けの蜘蛛は地の隅を這う
028:母 中村師 母の日に帰ると約束した年も花束だけが敷居を跨ぐ
030:橋 なかはられいこ いままでに渡ったはずの橋の数、交わしたはずのやくそくの数
034:背中 なかはられいこ 台本に書かれたような朝が来て、さよなら背中、肩の糸くず
038:横浜 遠野津留太 赤いヒールの少女の噂も立ち消えて横浜本牧秋がまぶしい
048:袖 桜井敏幸 留袖が良く似合う君あの頃と同じ呼び方できぬ距離あり
054:靴下 なかはられいこ お祈りのかたちになって靴下を脱ぐまめでんきゅうのあかりの下で
062:風邪 ひぐらしひなつ 黄水仙庭に咲く日はこじらせた風邪の名残の咳をこらえる
065:城 瀧村小奈生 ちっぽけな町のぬくさに吹かれつつ何べんも来た城跡に立つ
068:四 秋月祐一 朝焼けの始まりさうな午前四時 送信できないメールがひとつ
069:花束 瀧村小奈生 誕生日花束と愛・安心をやりとりしてる五千円分
071:次元 屋良健一郎 異次元に迷い込みたる猫のごと三味の音する路地を彷徨う
078:携帯 千坂麻緒 携帯を抱いて眠れば君からのふるえがそっと目覚めさす朝
081:洗濯 武山千鶴 磨り減つた洗濯板はいまもある誰も棲まない祖母の家の土間
086:占 大辻隆弘 竹たちはひかりなまなましく立ちて陽のあたりゐるひとところ占む
088:食 みやちせつこ 食卓に四人揃うもまれとなり庭のコスモス一輪飾る
090:薔薇 石井一尋 兄亡きし部屋に一輪真っ白な薔薇の花あり 喪のあけし朝
092:届 みやちせつこ 書きあげし退部届けを鞄に入れ口数少なく子は出かけたり
092:届 武山千鶴 届出のやうに宣言した恋の受理されぬまま月細りゆく