題詠マラソン秀歌選(過去ログ151〜160)
引き続き、題絵マラソン秀歌選。数日前にはこれくらいで終わりかと思っていたが、終盤になってランナー目白押しで、この分だと後2回くらい続くのかも知れない。いよいよ後3日だ。
考えてみれば、他の方の短歌を選ぶということは、自分の鑑賞眼を試されているということでもある。今頃になって、だんだん恐ろしくなって来た。
題詠マラソン秀歌選・過去ログ151〜160
010:線路 素人 赤錆し線路の続く廃坑に動くものなしただ風の音
011:都 やまね 側溝に「住めば都」と吐き捨ててシャッター通りを駆け歩く午後
023:うさぎ んも うさぎ撫で余命分けたか若者らまなじり高く鹿屋を発てり
025:泳 篠原となみ 従順な水に折り目をつけながら 泳ぐ 誰にも媚びない背中
030:橋 佐藤麦 この橋は渡り放題白猫も家族もいない秋の夕暮れ
030:橋 小倉るい 橋二つ渡り君住む街角で熱きコーヒー買う夜明け前
034:背中 堀野真実子 ねったりとからだを伸縮させながら猫が背中を撫でられに来る
034:背中 五十嵐仁美 寝てる子の背中に指でそっと書くオマエガセカイデイチバンエライ
038:横浜 五十嵐仁美 「横浜」と声に出す時なんとなく口の形が山口百恵
039:紫 西橋美保 目つむりてお高祖頭巾の紫を被る刹那の一葉の雪
043:馬 佐藤文香 催馬楽の琵琶のひとりが帰りがけに往年の恋語りだしたり
046:泥 堀野真実子 親戚の子に何回もねだられて泥鰌の絵ばかり描くなつやすみ
047:大和 水野華也子 霧失せて久しき昼の日差し伸ぶ大和路快速いまだ動かず
048:袖 車前子 Tシャツの袖を捲くりし濁声の男イチゴのかき氷待つ
052:螺旋 車前子 灯台の螺旋階段のぼり詰め秋めく風をひとり占めする
057:制服 遠山那由 (紅色に黒いレースのキャミソール)今朝、制服は脱ぐために着る
060:影 小野伊都子 赤や青みどりの影を連れているピエロにもらう白い風船
061:じゃがいも 車前子 じゃがいもと渾名されたる少年のじゃがいものまま父となりけり
065:城 草野由起子 壊して後また積み上げる砂の城日々の暮らしも風に吹かれて
066:消 まっちゃ 常夜灯消ぬがに揺らぐ馬籠宿明日などつひに来ぬままがよし
070:曲 氏橋奈津子 どこへゆく幕間でしょう間奏曲ばかりながれるホテルのロビー
078:携帯 杉山理紀 ひとりにひとつの心を残すゆっくりと携帯電話を折り曲げながら
083:キャベツ 杉田加代子 臨月のキャベツが肩で息をする朝明の露にぬれた畑で
086:占 宵月冴音 占いは「仕事忘れて街に出よ」雲の向こうはきっとあおぞら
092:届 椎名時慈 届いても届かなくても良い手紙 ポストに出せば明日は晴れる
094:進 西村玲美 まつすぐに進めどいつか戻る道同じ顔せる石ころ並ぶ