題詠マラソン百人一首・あとの祭

 10月末が題詠マラソンの締切りだったので、このところその関係のものばかりが続いた。これにて一連の記事は一応終了である。これからは、また元来の怠け者の「雑食ブログ」に戻して行きたいと思う。

       
          題詠マラソン百人一首「あとの祭」

  一昨日「前夜祭」を、昨日「百人一首の現物」を掲載した。今日は、これまで書き落した感想などを「あとの祭」として、少し書いてみたい。

  私のブログをこれまで御覧になっている方はお判りだと思うが、全部の歌にざっと目を通して、やや甘い基準でラフな予選を行い、その予選通過作から「百人一首」を選んだ。したがって、予選通過作はたくさん溜まっていたので、選ぶ素材は一応揃っていた。もっとも、最後の数日は、ランナーの方々のラストスパートにつられて、私も作品を追っかけるのに結構忙しかったが・・・。なお、予選通過作の中で気に入ったものを、「秀歌選」として順次ブログに掲載して来た。

  歌を選ぶ基準は、「私の勝手な物差し」と言うしかないが、それにしても最終段階での一番の苦労は、100人と100題との組合せだった。藤原定家さんなら好きな歌を選べば済む話だが、100の題ともなれば、ことはそう単純ではない。選歌方法の基本的な方針については、これまでもこのブログに書いて来たので省略したいが、実際の応用動作としては、次のような手順によった。
①「これは絶対」という「一目惚れ」した歌がいくつかあるので、これは一応「確定」とした。
②次に、残りの題別に好きな作品をいくつか選び、「これが良いな」ということがかなりはっきりしているものは「準確定」とした。
③それ以外の題は、候補作がたくさんある作者の場合には融通が利くので、まずはそれ以外の作者のものを選定し、「実力者」の作品は後回しにした。
④以上の結果、半分くらいの題は埋まったので、残りの題に積み残しの「実力者」の作を嵌め込んで行った。
⑤更に残った題に、まだ選んでいない人の作品を嵌め込んで行った。
⑥一応全部の題が埋まったところで、予選通過作の多い人の漏れがないかどうかをチェックし、漏れのあった数人の人につき、一応入れていた作品との入れ換えをした。当初は予選通過作10首以上の人を対象にと思っていたのだが、10首以上の人が100人を超えたので、15首をメドに切り替えた。

  以上のような過程を経て選んだものなので、ある人にとっては会心作でないものが入っている場合もあるだろうし、ある題ではベストでないものが入っている可能性も大きい。短歌の神様から見てそうであることは当然だが、私の目から見ても、これがベストの選歌だと言い切る自信はない。例えば、ある人の作品の中で私の目から見て最高だと思うものが落ちている場合、それを入れるためには、その題で選んだ他の人の作品を落とさなければならない。落としっぱなしで良ければ比較的簡単だが、その人の作品も落としたくないというケースが多く、そうなると、その人の別の作品を別の題に入れなければならない。このように、次々に玉突き状態になって来る。そうなるとキリがない。
  実はそのような玉突きも、⑥の後の最終段階でいくつかはやってみたのだが、そろそろ限界だという状態に来てしまった。ある人の作については良い結果になったのかも知れないが、「玉突き」の影響を受ける「被害者」にとってそれが良い状態かどうかは判らないし、かえって全体としてのレベルが下がるのかも知れない。それやこれやで、玉突きは適当なところで切り上げることにした。本来なら、もう少し時間を掛けて練り直すべきなのかもしれないが、いじった結果が良くなるという保証もないし、それに元来せっかちな方なので、いつまでもこれに引きずられるのも本意ではなく、この辺が潮時かなという判断をした面もある。
  以上のような選歌なので、スタートが違っていれば、同じ私が選んでも、かなり違う結果になった可能性もある。玉突きの結果いったん入っていた人の作品を落としてしまったケースもあるし、玉突きの結果生じた穴埋めで突然浮かび上がった人もいる。所詮完璧ということは期待できないだろうし、どこかに歪みがあることは否定しないが、私としては、結構真面目に、ベストではないにせよベターを模索したことは事実である。出来上がったものを眺めてみると、まずまずの出来かなという気もしないではないし、題詠マラソンのレベルの高さを示しているような気もする。

  そうは言っても、ぜひ入れたい歌で落したものもある。それらを拾って、「百人一首・補遺」を作ろうかとも思ったのだが、それをやればキリがないし、またしても当落すれすれのものが出て来そうである。これから気が変われば別だが、そこまで手を広げるのもやり過ぎという気もするので、多分見送ることになるだろうと思う。まあ、考え方によっては、これまでの「秀歌選」で、それはカバーされていると言えなくもないだろう。それに、本来私の気紛れからはじめた試みなので、それほど神経質になることもあるまいと思ったことも否定はしない。

  それにしても、予選段階からすれば相当な時間を要したことは間違いない。時間にゆとりのある「自由の身」だからこそできた話で、とても皆様にお勧めできることではなさそうだし、来年も試みる余裕と体力と気力があるかどうかは、来年になってみないと判らない。もっとも、ブツブツ言いながらも、結構楽しんでいたことは事実なのだが・・・。
  「選ぶ」ということは、自分の鑑賞眼を試されることでもある。自分勝手にはじめたことではあるが、だんだん恐ろしくなって来たのも、これまた事実だ。

  なお、全37,000首弱のうち、予選通過作は3,136首だったのだが、題別に予選通過作の数を数えてみたら、下記のような結果だった。この中には、完走していない人の作品も含まれているので、後の方の題ほど選択の母体となった歌の数自体が少ないということは言える。つまり、完走者が310人ということだから、全作品の数は、最終題の「マラソン」で310首ということになり、はじめの方の題の作品は、それよりかなり多いということになる。そうは言っても、この数字から見る限り、「ある程度のレベルの短歌が作りやすい」題とそうでない題との差が、かなり出ているような気がする。また、「これは難物だ」と思った題は、予選通過ラインを多少甘くした面もあるので、同じ物差しを適用すれば、もっと差が出て来るのかも知れない。それはそれとして、予選通過作が多い代表は、「たそがれ」「香」、逆に少ない代表が「計画」、「陸」、「科学」といったところである。なお、私の作品は、候補が少ない題の予備役の積りで待機させていたのだが、結局「陸」に入れることになった。

         予選通過作の数・題別一覧
<60>016:たそがれ
<58>044:香  <51>034:背中 <50>021:うたた寝 
<49>010:線路  <48>072:インク  <45>002:色 008:鞄 015:友 018:教室 053:髪 060:影  <44>028:母  <43>054:靴下 057:制服  <40>009:眠  040:おとうと  090:薔薇  097:静
<39>011:都  030:橋  048:袖  096:留  <37>043:馬  081:洗濯  <36>003:つぼみ  004:淡  045:パズル  059:十字  066:消  <35>006:時  049:ワイン 080:書 092:届  <34>022:弓  035:禁  052:螺旋  067:スーツ  070:曲  075:続  078:携帯  <33>038:横浜  039:紫  046:泥  065:城  069:花束 083:キャベツ 091:暖  <32>020:楽  042:官僚  068:四  074:麻酔 084:林  <31>001:声  013:焦  019:アラビア  063:鬼  098:未来  <30>005:サラダ  025:泳  033:魚
<29>061:じゃがいも  062:風邪  073:額  <28>089:巻  099:動  <27>093:ナイフ <26>037:汗  077:櫛 26  086:占  <24>027:液体  041:迷  056:松  076:リズム  <23> 094:進  <22>023:うさぎ  026:蜘蛛  051:泣きぼくろ  055:ラーメン  058:剣 085:胸騒ぎ 095:翼  <21>024:チョコレート  047:大和  050:変  071:次元  <20>032:乾電池
<19>007:発見  <18>012:メガホン 014:主義  079:ぬいぐるみ  088:食  <17>031:盗  036:探偵  082:罠  <16>100:マラソン  <15>029:ならずもの  <13>017:陸  064:科学  <12>087:計画