お日柄のルール(スペース・マガジンより)

 例によって、スペース・マガジン(日立市で発行されているミニコミ誌)に書いたものの転載。お正月らしく、多少のんびりしたものを書いた。なお、「お日柄」のルールは、長年高校の国語教師をしていた私の兄から、数年前に仕入れたものなのだが、案外知らなかったのは私ばかりで、御存じの方の方が多いのかも知れない。


[愚想管見] 大安吉日                   西中眞二郎

 明けましておめでとうございます。早いもので、このコラムも1年になりました。今年もよろしくお願い申し上げます。
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 この正月で、私も古希を迎えた。「人生七十古来稀なり」ということだが、まだ「古来稀な老人」になったという気は全くしない。もっとも私の満年齢はまだ68歳なのだが、この種のお祝いは旧来の「数え」でやるのが慣例らしい。ただし、60歳の還暦だけは例外で、「生れた年に暦が還る」のだから、当然「満」ということになる。
 これとは似て非なるものではあるが、大安吉日といった「お日柄」も、依然として健在である。私はあまり縁起を担がない方だと思っているが、それでも結婚式や葬儀といった大きなイベントとなると、やはり多少は気になる。
 もっとも、良く利用されている割りには、その「お日柄」のルールをご存じでない方が多いようだ。比較的最近になって身内から仕入れた知識の受け売りなのだが、話のタネにそのルールを御披露しておこう。
 「お日柄」は、「大安・赤口・先勝・友引・先負・仏滅」の6種類であり、この順番の繰返しになる。どの日をどの「お日柄」に充てはめるかは、旧暦の月日による。旧暦の月数と日数を足し算し、その合計を6で割り、その余りがゼロであれば大安、1であれば赤口と順次続く。したがって、旧暦の同じ月の間はこの順序が続くが、月が変わると「飛び」が出て来る。大晦日は年によって12月29日の場合と30日の場合とがあるようだが、元日は当然1月1日なので、1+1=2、2÷6=0[余り2]、したがって、旧正月の「お日柄」は常に「先勝」となる。赤穂浪士の討入りのあった旧暦12月14日は、12+14=26、26÷6=4[余り2]だから、これまた毎年「先勝」ということになる。
 今年の私の手帳には、「お日柄」は印刷してあるが、「旧正月」の記載はない。手帳によれば、1月後半から2月にかけての「先勝」の日は、1月の19日、25日、29日、2月の4日、10日、16日、22日と、1月29日以外は6日間隔で続いている。念のためにその前日のお日柄を見ると、1月29日の前日以外はすべて「赤口」となっているが、1月28日だけは「仏滅」で不連続となっている。ということは、1月28日と29日の間で月が変わったということになり、平成18年の旧正月は1月29日だということが判ることになる。なお、その前日の大晦日が「仏滅」だということは、それが旧暦12月29日だということも判る。
 話は変わるが、おみくじや占い、それに縁起かつぎは、21世紀の若い人たちの間でも結構生き延びているようだ。我々の世代は、戦後の新しいかつ厳しい時代を挟み、古来の「因習」などは、多かれ少なかれ対決すべき対象として意識して来た面もある。しかし、若い人たちにとっては、それらはもはや戦うべき相手ではなく、むしろ生活のアクセサリーとして、適当に付き合って行ける相手になって来ていると見ることもできるのかも知れない。
                   
                  <スペース・マガジン1月号所収>