自作50首(51〜100)と完走報告
先ほどゴールしました。まず後半の50首を御披露させて頂きます。完走の充足感というよりは、むしろ皆様との接点が一つ減ったといった虚脱感もなきにしもあらずです。短歌関連以外にもやりたいことがいろいろありますので、バランスのとれたペースで日を送ろうと思っております。
051:しずく 雨散るは「あられ」「しずく」は雨の下造字の妙に感じ入りおり
052:舞 知事大臣(おとど)小粒になりし役者らが花の舞台でひと踊りする
053:ブログ 荷物整理しばし忘れて新しき書斎でブログの書込みをする
054:虫 寝つけぬままベッド離れし暁は空の白みて虫の声する
055:頬 珍しく南の里に積もりたる雪頬張りて出湯に浸る
056:とおせんぼ とおせんぼされないうちに尻込みし引き返したることもありたり
057:鏡 眼鏡掛け皮のケースを手に持ちて眼鏡とケースを捜していたり
058:抵抗 思いつきに近き改革の世にあれば抵抗派なるもまた良しとせむ
059:くちびる 「くちびる」とひらがなで書くことだけで文字の流れのなまめきて見ゆ
060:韓 霧島の出湯に向かうバスにありて韓国岳(からくにだけ)は霞みて見えず
061:注射 古き日の予防注射の痛さなど若き看護婦(ナース)に語りておりぬ
062:竹 竹垣を左に見つつ歩み行けば桂離宮に弱き雨降る
063:オペラ 宰相はオペラを好むと聞きしよりオペラに行くも少し疎まし
064:百合 広告の吉永小百合たおやかに貫禄付けてパソコン提げる
065:鳴 原色の太鼓鳴らして銅鑼(ドラ)叩き葬儀いささかチベットめける
066:ふたり 月見むと酒壜提げて妻とふたり二階に上がり電気を消しぬ
067:事務 事務的な話を先に済ませむと思い出話は先送りする
068:報 旅先で作りし歌を妻に見せ一人の旅の報告とする
069:カフェ 古き日のカフェは知らずカフェバーも行きしことなく古希とはなりぬ
070:章 章立てにするもいささか大袈裟と思いつ原稿見直しており
071:老人 我れを含めウィークデーのみちのくはリュックを背負った老人ばかり
072:箱 引越しで箱詰めにせし猫なれば不信の目にて我れを見詰める
073:トランプ 大手術明日に控えし若者が見舞いの娘とトランプしており
074:水晶 星占い水晶占い花占い縁なきままに古希を迎えぬ
075:打 ふるさとの町合併に消える今日心進まぬ祝電を打つ
076:あくび あくびする姿を写真に撮りし犬が死してよりはや八年経ちぬ
077:針 千人針贈りし人も着けし人も果てし八月また巡り来ぬ
078:予想 予想しておらざる位置に富士見えて朝日を浴びて輝きていぬ
079:芽 梓川木々の芽生えの淡き中に桜は白く彩り添える
080:響 白き足が軽き足音響かせて白鳥の群れ舞台をよぎる
081:硝子 歳末の大掃除らし日を受けて窓硝子拭く若き人あり
082:整 解体を控えし家を整理しつ壁傷つけるにためらいており
083:拝 強引な靖国参拝進めるが「英霊」の意に沿うとも思えず
084:世紀 明るき話題乏しきままに新しき世紀に入りて五年経ちたり
085:富 初上京の車窓に見しと似た富士が車窓に見えぬ五十年経て
086:メイド 人形を土産にせむとラベル見ればメイド・イン・チャイナの文字薄く見ゆ
087:朗読 利子収入十六円との朗読に笑いも湧かず報告終わる
088:銀 禅寺の太き銀杏に苔むして紅葉の赤に黄の色添える
089:無理 無理するなと言いつつ無理を強いし日が我にもありしとふと思いおり
090:匂 美味そうな何かの匂い漂いて妻に呼ばれし厨に降りぬ
091:砂糖 「佐藤利雄」と打ちし積りのパソコンが「砂糖と塩」を出すとの話
092:滑 詩歌館の池の淀みの水すまし小雨を受けて滑りておれり
093:落 目覚しの鳴るに任せて暫くは我れ自堕落にまどろみ居たし
094:流行 流行と縁なき日々を過し来て無粋な古希を迎えておりぬ
095:誤 文語打てば誤りマークがいつも出るこのパソコンの疎ましくもあり
096:器 若き日に器用貧乏と言われたる友あり洒脱に老いておりたり
097:告白 白々しき科白(せりふ)も混じえ告白す白々明(しらじらあけ)の白山(はく
さん)白し
098:テレビ 若き日に比すれば感動薄きまま古き映画のテレビ見終えぬ
099:刺 職を辞してパソコン名刺作りけり「年金生活者」と肩書付けて
100:題 旅の夢でこは難題と思いしは覚めればあらかた由なきことにて
以下は、主宰者のブログにトラック・バックした完走の弁です。セルに入りきらなかったようで、後半はカットされていました。
「先ほどゴールしました。去年8着でしたので、今年はゆっくり走ろうと思っていたのですが、根がせっかちなもので、結果としては思ったよりずっと早いゴールになってしまいました。ブログは初心者のため、頭よりむしろ肩が凝ったというのが正直なところです。これからは、自分の歌からはとりあえず離れて、「選歌集」をボチボチ進め、最後の段階の「百人一首」でやっと「完走」という積りでおります。このような機会を今年も作って下さった五十嵐さんに厚く御礼申し上げます。」