題詠百首選歌集・その14 & 続・尺祝い

 このブログのアクセス件数が1万件を超えたのが3月4日だったのだが、今日2万件を突破した。1月余りで1万件のアクセスがあったわけであり、その大半は題詠百首の関係だと思う。毎度同じようなことばかり申し上げているのだが、思いもよらぬ件数である。アクセスして下さった方々に、厚く御礼申し上げたい。
 至って無粋なブログですが、今後ともよろしくお願い致します。
 ところで、引き続き選歌集。(うっかりして、作品番号(?)を書くのを忘れていたので、追記する。なお、この番号は、主宰者のサイトに作品数として記載してある数字を利用している。重複投稿や誤投稿もあるので、正確なナンバーとは限らない。4月16日追記)



001:風(180〜204)
 (秋野道子)桃の木の扇で作るたおやかな風さりげなくお裾分けする
 (ゆづ)おとなにはなりたくないと言っていた少女の手から離れた風船
 (中村うさこ)北風と太陽の喩(ゆ)を思ひ出づ桜の季(とき)にマントを脱げず
002:指(181〜205)
飛鳥川いるか)白木蓮(はくれん)の真夜さかむけの指をもてをとこが撫づるCtrlキー
(嶋田電気)公園ではじめてあった人たちと将棋を指している水曜日
(中村うさこ)裏の鍵、ガス、アイロンと指差していざ出で行かん老いの習慣
004:キッチン(158〜182)
 (和良珠子) また一本包丁を研ぐ音がする夜のキッチンは母の聖域
 (市川周)キッチンにドミノを並べる妖怪がいてローソンへゆけない春夜
 (瑞紀)泣く時はキッチンに行く君の背を長距離バスの中で思へり
 (濱田花香) 夢語ろ そうキッチンでポトフ煮つ 少し小説読む我が姿
 (新藤伊織)あなたには伝えきれない事ばかりキッチンからは春色の湯気
 (濱屋桔梗)包丁を持ちキッチンに並び立ち日々の出来事語る週末
009:椅子(131〜157)
 (そばえ)窓のないカウンセリング室の椅子で今日も誰かが森を見ている
018:スカート(83〜120)
  (佐藤紀子)コーラスに夢中の頃の想ひ出はクローゼットのロングスカート
 (振戸りく)大胆なスリット入りのスカートは薄暗い店専用にする
 (斉藤そよ)悲しがる白い日付に一線をひくために穿く春のスカート
  (佐原みつる) 連休の最終日には冬枯れの芝生にこぼすフレアスカート
(田丸まひる) スカートの襞にきちんとしまい込むきみを泣かせてしまう真実
 (ことら)従順の証としての制服のスカートの裾ざっくりと裁つ
 (まゆねこ) ひらひらのフレアースカートなびかせてモネの絵になる若草の土手
034:シャンプー(31〜56)
 (鈴雨)シャンプーの香りはいつも呼び覚ます 週末ごとの逢瀬の記憶
 (翔子) なにもかも洗い流せるものならば買い占めてやる薔薇のシャンプー
 (五十嵐きよみ)今ごろは別の誰かのシャンプーの香りを褒めているのでしょうか
 (水須ゆき子)つい同じシャンプーなんか使ってるうちに家族になってしまった
  (愛観) 午前4時 流し忘れたシャンプーの泡が消えてく肩の冷たさ
066:ふたり(1〜26)
 (行方祐美)ふたりとはときには寒き生き方とお好み焼きをひっくり返す
 (aruka) 真夜中にコンビニまでのオデッセイ けむりのようなぼくらふたりで
 (ほにゃらか) ふたり子のためなら死ねる ふたり子のためにも死ねぬ われは母なり
 (春畑 茜)ふたり目の蹴者(キッカー)として球を置く影傾けるゆふぐれのひと
067:事務(1〜24)
 (丹羽まゆみ)セーラーを事務服に替へ窓口にほほ笑む少女まだぎこちなく
068:報(1〜26)
 (船坂圭之介)報はれしひと世なりしかめりはりの無き生き様を省みる 春
 (丹羽まゆみ)報はれぬおもひ放熱するごとく君なき春を咲くさくらばな
 (紫女) 青畳寝そべりラヂオのひび割れた天気予報の雨を聞きをり
069:カフェ(1〜25)
  (ねこまた@葛城) 古びたるカフェの片隅黙々とベース奏でる君の指先
(しゃっくり)用無くて死語となるものふたつ有り乗らぬタクシーと入らぬカフェ
 (船坂圭之介)決断を為すあたはねば真夜近き街に馴染みのカフェーに向きぬ
 (みずき)黎明をめくるページの端つこに今日も置かれるカフェの椅子が
 (紫女)陽のあたるオープンカフェでひとりきり復唱してみるあなたの口癖
 (飯田篤史) やさしさとさみしいそらはカフェオレのはんぶんずつのぼくらのきもち
 (春畑 茜) カフェといふ春の空間ひとのゐる椅子ゐない椅子昼をならべる
070:章(1〜26)
 (はこべ)楽章の切れて短きしじまには 春のいぶきがかすかに淡く
 (みずき) 木の椅子にショパン開かれ奔放な日差しを捲る夏の楽章
 (丹羽まゆみ) 明日から着ない制服たたみゐて子は愛しげに校章はづす
 (春畑 茜)死にたくて章魚(たこ)は死にしにあらざるを五月の卓にわが噛みしむる
071:老人(1〜25)
 (みずき)過去きざむ秒針のなか老人は夜床(ゆとこ)の石となりてまどろむ
 (紫女)濡れながら折れた傘抱く少年の横顔蒼き老人が棲む
 (春畑 茜)老人とネロの暮らしはつつましく絵本の村に朝がはじまる
 (川内青泉)起きるとき物に掴まり立ち上がる六十路を越えて老人となる