平成17年国勢調査の概要(茨城県版)

 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。もっとも、4月20日のブログに掲載したもの(経済産業ジャーナルからの転載)を簡略化し、茨城県向けに少しアレンジし直したものなので、内容的にはあまり新しいことはない。


[愚想管見] 茨城県もマイナスに             西中 眞二郎

  
  昨年10月1日、5年に1度の国勢調査が行われた。その速報値が昨年末公表されたので、皆様既に御存じのことも多いと思うが、この際「ニュース解説」をしておこう。その数字によれば、我が国の総人口は1億2775万6815人、5年前の前回調査に比して、0.65%の微増である。前回の伸びが1.08%、その前が1.58%だったわけだから、今回の伸びがいかに低いかがお判りだろう。なお、これは5年前との比較なのだが、昨年末には、我が国の人口は既に減少に転じていたようであり、これまでの成長社会から、減少社会へと、社会の基本構造が大きく変わって来つつある。
  これを47都道府県単位で見ると、前回の国勢調査からの5年間に、秋田、和歌山両県の3%を超える減少を底として、合わせて32県の人口が減少しており、御当地茨城県も、これまでの高度成長から、遂にマイナスに転じた。人口減少県が3分の2以上を占めるに至ったということは、既に多くの地域で人口減少社会が現実のものとなっているということを如実に示している。
  個別に見ると、一番目につくのは、東京都が4.2%増で全国トップ、これに次ぐのが神奈川県3.5%増と、首都圏中心部への集中が進んでいることだろう。東京23区を区別に見ると、すべての区の人口が増加した。これは昭和30年以来のことであり、特に中央区の人口は、35.3%増と全国市町村の中でもトップの伸びを示したし、港区、千代田区も15%以上の増と、都心の復権が著しい。地価の低位安定とこれに伴う住宅再開発の進展とともに、都心回帰の傾向が顕著に現れている。また、大阪市が久々に人口増加に転じたことも目に付く。東京23区の人口増大と併せて、大阪市の場合も都心回帰現象が生じて来たと見ることができるだろう。
  御当地日立市は、合併により久々に人口20万人の大台に乗っていたが、今回調査では、残念ながらまた20万人を切ってしまった。日立市と同じかそれ以上のクラスの市で前回に続いて人口が減少したのが、函館、旭川、八戸、いわき、前橋、横須賀、福井、甲府、岐阜、静岡、沼津、高槻、豊中東大阪、尼崎、和歌山、呉、下関、徳島、北九州、佐賀、長崎等の諸都市、今回新たに人口が減少に転じたのは、青森、盛岡、秋田、福島、金沢、長野、松本、明石、奈良、松江、高知等の諸都市であり、人口減少傾向は、多数の地方中核都市にまで及んで来た。
  それでは市町村単位で全国を見るとどうか。今回の2,217市町村の単位で人口減少市町村の比率を見て行くと、平成2年から7年にかけての54.8%、7年から12年にかけての63.9%に対し、今回調査では72.4%の市町村の人口が減少しており、特に、北海道、東北、四国の人口減少市町村の割合は、85%を超えている。
  減少市町村の比率が最も低い関東地方を見ても、上記の期間の人口減少市町村数の割合は、24.4%→45.1%→57.6%と大きく増加しており、茨城県の場合も、14.8%→50.0%→66.7%と、ほかの地方の減少市町村比率のレベルに近付きつつある。
  これまで見て来たデータから今後の状況を想像すると、全体としての人口減少の中で、大都市への人口集中、首都圏外縁部を含む地方の人口減少という傾向がいよいよ進んで来そうである。地方中核都市も、一部の有力都市を除けば例外ではない。人口減少社会の中での我が国の国土のあり方について、差し迫った重要課題として真剣に取り組んで行く必要があるだろう。
              (スペース・マガジン5月号所載)