サヨナラ小泉さん(スぺース・マガジン)

 残暑お見舞い申し上げます。
 
 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。少し激しすぎるのかも知れないし、異論のおありの方、更には不快に感じる方もおられるだろうが、私としてはこれでもまだ言い足りない部分があるような気すらしている。ポスト小泉は、果たして如何なことになるのだろうか。せめて小泉亜流政権が誕生しないことを祈念するのみである。


[愚想管見] サヨナラ小泉さん              西中眞二郎

 
 あなたが自民党のみならずこの国までもブッ壊して去って行かれるのを、苦々しさの混じった安堵の思いで見送っています。去り行く方に対しては温かいねぎらいの言葉で送るのが日本的美徳なのでしょうが、謙虚、調和、羞恥心、節度、自己抑制といった「日本的美徳」をお持ちでなく、加えて論理の通じない幼児性をお持ちのあなたをお送りするには、その美徳は不要でしょう。
 あなたが総理の座にあった5年間に、この国は大きく破壊されました。悪かったことがすべてあなたのせいだとまで申し上げる積りはありませんが、所得格差・地域格差は拡大し、高齢者は冷遇され、奇妙な国粋主義が蔓延し、拝金主義・弱肉強食のギスギスした社会になってしまいましたし、靖国問題に典型的に見られるように、あなたの粗暴、かつ、責任感を欠いた言動により、近隣諸国との関係は悪化しました。また、イラク派兵に象徴されるように、粗雑な解釈により憲法を軽視したのみならず、「アメリカべったり」ならまだしも「ブッシュべったり」の政治姿勢も加えて、国際社会における我が国の存在感は、いよいよ希薄になって来たような気がします。
 郵政民営化に象徴される「改革」にしても、あなたの思い付きの面が大きく、その行方は全く見えて来ません。「郵便局員がなぜ国家公務員である必要があるのか」といった枝葉末節の問題提起によって、基本的な問題点から国民の目をそらせたとしか思えないのです。靖国にしても「靖国参拝に反対する人は、中国に同調せよと言う人だ」といった類の粗雑なアジテーションが目に付きます。どうして中身のない「小泉マジック」が国民を欺瞞することができたのか不思議でならないのというのが、私の正直な印象です。
 「改革」や「景気回復」を評価する見解もあり得るとは思いますが、未来像を持たないあなたの無分別な暴走により、見せかけの「改革」は行われたものの、それが「改善」かどうかは大いに疑問です。「景気回復」をとってみても、リストラによる勤労者の貧困化と二極分解、地域社会の崩壊、政府と企業のみが潤う超低金利等により、多くの人々の犠牲の上に立って、一見景気が回復しているように見えているだけのような気がします。加えて、この間、中国等の経済拡大によって我が国経済が潤った面も大きく、「景気回復」があなたの功績だと評価する見方には、私は同調できません。
 個々の施策は別としても、先般の総選挙の際の刺客騒ぎに象徴されるようなあなたの独裁者ぶりには、恐怖の念すら覚えましたし、また、それに追随して恥じるところのない与党にも、絶望感を抱きました。
 あなたは去って行かれます。後を引き継ぐのがどなたかは存じませんが、後の方への宿題を、「小泉路線の微調整」程度で済ませるわけには参りません。「この5年間、小泉政権が間違った方向に走ってしまったのはまことに申し訳ない」という国民に対する反省と謝罪の言葉が後継者の口から聞かれない以上、「サヨナラ小泉さん」だけではなく、「サヨナラ自民党」と言わざるを得ません。お耳障りな点はお詫び申し上げますが、あなたを温かい言葉で送る気持にはどうしてもなれないのです。
(スペース・マガジン8月号所載)