題詠百首選歌集・その49

 今日はまた暑い日になった。「戻りの夏」という言葉があるのかどうかは知らないが、まさにそんな感じの一日だった。九州はじめ台風被害が随分あった地域もあるようだが、このブログを御覧下さる皆様に格別の被害がなかったことをお祈りしたい。


          選歌集・その49

002:指(290〜317)
碓井和綴)撫でていく1本2本の愛おしく夜のはじまり指輪を脱がす
047:辞書(135〜159)
(まゆねこ)電子辞書いっせいに引く言の葉の同じ答えがなぜかさみしい
(黄菜子)無人島に暮らすとしたら持って行く星座の本と国語の辞書を
(堀 はんな) 秋の日にふと取り出した古き辞書ページ捲れば花栞落つ...
048:アイドル(139〜164)
(しょうがきえりこ) 年下のアイドルたちにテレビごし大人になれと急かされている
(水須ゆき子) 右斜め上から撮ればアイドルはよりうつくしき悲しみとなる
(堀 はんな)青春の我がアイドルはビートルズ口ずさみつつキッチンに立つ...
051:しずく(133〜158)
今泉洋子)メロディが口いつぱいに鳴り響く星降る村にしづく茶を呑む
島田久輔)花びらをしぼって作った色水のしずくに透ける夏の終わりが
(水須ゆき子) うっすらと夜のしずくが溜まりゆくあなたの右の肩のくぼみに
057:鏡(115〜139) 
(みち。) うす暗い鏡だらけの部屋だから寂しさばかり反射している
(中村うさこ)鏡にて初めておのれ見る孫が鴉と同じ仕草するなり
(新野みどり)磨かれた鏡に映る微笑みで自分を応援する昼休み
058:抵抗(113〜139) 
  (翔子) 不意味だと知りつつ今日も試みる小さな抵抗秋の風吹く
今泉洋子) 花言葉の「抵抗」を秘め蝶の舞ふやうに立つなり著莪(しやが)の花群
  (わたつみいさな。) ほんとうのあたしでいるという抵抗 現実逃避とふりがなをうつ
060:韓(111〜135) 
(翔子) 「韓」の意味調べてみれば「いげた」らし地図を覗いて首傾げおり
今泉洋子)韓国に帰ることなき陶工の墓は寄りあふ祖国にむきて
(空色ぴりか) 韓国の古き弥勒の指先が柔らかに指す頬の傷あと
(新野みどり)韓流のドラマ見ながらぼんやりと自分の恋を重ね合わせる
073:トランプ(78〜103)
(おとくにすぎな)うらがえすトランプみんな蔦のなか種もしかけもねむる小鳥も
(ワンコ山田)一人っ子私が遊ぶトランプは4人の私を見分けて並ぶ
(野良ゆうき) トランプを並べてすごす一日(ひとひ)にも一日(いちにち)分の地層が積もる
(萱野芙蓉) 放蕩は遠きゆめなりトランプを配りし叔父のうで細かりき
091:砂糖(50〜74)
   (はるな 東) たっぷりのミルクに砂糖はいれないであなた流儀の珈琲タイム
(智理北杜) 角砂糖をブランデーに浸し火をつけた たった一つの叔父との思い出...
(紫峯) むらさきのスミレの花の砂糖漬け熱い紅茶をカップに注ぐ...
093:落(50〜74)
(原田 町) 巧みなる罠に落ちたる心地して夏の終わりをじりじりといる
(紫峯) 不覚にも落涙(らくるい)をせし哀しみにそーっとそっとレタス剥きおり..
(彼方) 亡き君と落ちゆく月の弔いに我は西向く背を焼かれつつ