安倍さんに対する世論の評価

 安倍さんが自民党総裁に決まった。当然総理に指名されるだろうし、我が国の今後は安倍さんに託されることになる。以前にも書いたように、私はさまざまな面で安倍さんは総理としては不適格な人物だと思っているが、今日は、安倍批判をしようというわけではない。判らないのは、世論というものの動向だ。
 自民党が安倍さんを選んだ最大の理由は、「国民的人気」があるからだという。まずこれが私には判らない。さしたる実績も経験もない安倍さんに、なぜそれだけ「国民的人気」があるのだろう。また、政策面ではなく、「選挙に勝つための党首の人気」という物差しで総裁を選んだのだとすれば、自民党は、政策集団たる政党の使命を放棄したものだという気がしてならない。
 今朝の朝日新聞の報道によれば、世論調査の結果、安倍さんが自民党総裁に選ばれたことにつき、「よかった」と思う人の率が、男性52%、女性62%という結果になっている。この数字も、私には理解できない。安倍さんの基本的立場は、「戦後体制」の否定であり、「絶対的平和主義者」でないことは明らかだし、おそらく祖父の岸信介氏のDNAを強く受け継いでいる人物だと思う。他方、私がこれまで承知していた限りでは、女性の方が平和志向が強く、「戦争は嫌いだ。自分の子供は絶対戦場には出したくない。」という考えが強かったように思う。
 クールに言えば、女性の方が「感情的・教条的平和主義者」が多かったと思うのだが、それとは最も遠いところに居る安倍さんが、なぜ女性に好感を持たれているのかが私には全く理解できない。「海外派兵」や「憲法改正」等が現実の問題になりつつある現在において、言い換えれば「平和」が脅かされる可能性が高まっている現在において、なぜ我が国の女性の考え方が、大きく転換して来たのだろうか。それに対する賛否は別として、「平和」というものに対する女性の感性が変わって来たのだろうか。
 そうではなく、「政策等とは無関係に、若くて恰好良い安倍さんに好感を持っているだけだ」ということなのかも知れないが、それなら、ある意味では、もっと恐ろしいことだ。タレントの人気投票ならそれでも良いが、問題は我が国の今後を左右する政治の話なのだ。タレントと同じ尺度で政治家を評価されたのでは、国民は堪ったものではない。我が愛する女性たちの多くがそれほど愚かになったとは思いたくないのだが、それが一面の真実なのだとすれば、今後の我が国が思いやられてならない。なお、上記の調査では年齢別の数字は出ていないが、もし若者にも同じ傾向があるのだとすれば、我が国の進路は、いよいよ暗いものになってしまいそうだ。