題詠百首選歌集・その66・67・68・69

 いよいよ最終日になった。数日前まではまだ中間地点あたりを走っておられて、「この分では時間的に完走は無理かな」と他人事ながらヤキモキしていたのに、昨日あたりのラストスパートで悠々ゴールした方もおられる。そのような場合、私もホッとするような、嬉しいような気持になる。
 ところで、選歌集、最後のまとめ方をどうするか決め兼ねていたのだが、以下のようなことにすることにした。
 ①今日はいつものような「10題」ではとても済まないだろうから、10題ずつまとめて、同じ今日の欄に、選歌集をいくつか載せる。(同じ日の欄を複数作ることはできないようなので。)
 ②したがって、今日のこの欄には、これから選歌集67や68も追加することになると思う。
 ③締切りが過ぎたところで、残った歌を明日の欄にまとめて載せる。
 ④近日中に、予告ばかりが先走った「百人一首」を掲載する。


 ついでにもうひとこと。このブログへのアクセスが5万件を超えました。アクセスして下さった方々、どうもありがとうございました。(以上、31日午前記)


 
     選歌集・その66


012:噛(258〜282)
(浅葱) たくあんを前歯二本で噛める吾を見守る祖父の眼差しやさし
(御厨しょうこ) 寂しい と言わないために噛みついた腕の歯形がただ泣いている
  (杉山理紀 )あまく噛むたびにほころぶ人形を縫いあわせては思い出と呼ぶ
(千)歯噛みする悔しさ知らずにきたりけり月満ち満ちた夜の静けさ
(春村蓬) 犬の歯が我にも四本あることを思へりヌガーチョコを噛みつつ
037:花びら(192〜218)
(フワコ) 花びらとどんぐりきれいに並べられ砂場のケーキも午睡の時間
(寒竹茄子夫)散り際といへど花びら厚き薔薇夜の庭の闇いよよ濃くして
(大辻隆弘)花びらを木々のあはひに掃きよせて火を放たむとするひとりあり
(橋都まこと) 闇の中 ま白き花びら散り敷きて 異界への扉(と)が静かに開く
(けこ)一年はほぼ永遠(とわ)だった 制服の頃 夏茱萸の白き花びら
(杉山理紀)花びらがくっついている靴底で標識のない坂道のぼる
054:虫(164〜188)
(堀 はんな) 月影に涼風吹きて虫時雨空にレモンの星がまたたく...
(大辻隆弘)天道虫を指のさきまで歩ませて空の深みをあこがれてゐる
055:頬(165〜192)
(林本ひろみ)頬杖をついて何かを思うふり独りぼっちの午後のファミレス
(大辻隆弘) 右頬が夕日、ひだりが信号の青のひかりに濡れてゐしこと
(近藤かすみ) 『柔らかな頬』 持つひとはをみなにて母なることにしばし倦みたり
083:拝(139〜165)
ひぐらしひなつ) 廃村の礼拝堂を抱いたまま冬 深緑に満ちるみずうみ
(堀 はんな) 便箋に拝啓と書いて暫らくは言葉をさがす無沙汰の手紙...
(小太郎) 朝、夕に拝む背中の悲しみをその身に抱いて笑む地蔵尊
084:世紀(137〜163)
(砺波湊)来世紀まで使えるというカレンダーかかっています 祖母のお部屋に
(内田かおり)今世紀最大のことこの児等と私が出会えた場所があること
088:銀(131〜155)
(瑞紀)地の尽くる岬ゆ見ゆる始まりの海に無数の銀の波たつ
(林本ひろみ)銀色の鍵をいくつも持っている開く扉はどこにもない鍵
(ことら) 銀色の子猫みたいな心臓に耳押しつけて眠る冬の夜
(みあ)突然の訃報が届く暗闇にこぼすしずくは銀の三日月
(内田かおり) 雨上がりの園庭銀の水たまり長靴嬉しい降園のとき
(大辻隆弘)銀紙の鈍さに灯る夕月が電信ばしらをかすめて登る
091:砂糖(130〜154)
(林本ひろみ)憧れはほろほろ崩れる砂糖菓子あまい想いをただ残すだけ
(ことら)甘い嘘潜めておりぬ砂糖壺 少女の顔で二匙掬う
092:滑(129〜155)
(究峰)草スキーで歓声あげて滑りゆく子らも見えずにすすきが揺れる...
(内田かおり)滑り台の滑り具合の調節が児等の様子で幾度変えらる
(大辻隆弘)滑らかに秋をひとりは立ち去つてそののちはただ風の来歴
094:流行(132〜156) 
(里坂季夜)ふがいないやいやいやぁと流行りうた今日のメンツにあわせて歌う
(内田かおり) こどもたちの流行のアニメを見ることが先生達の休日課
(近藤かすみ)  私たちこんな言葉を生きてきた渦巻く『新語死語流行語』
(我妻俊樹)流行ってもひかずに終る風邪があり二列にならんで待つ熱海行き



 野暮用で数時間出掛けて帰ったら、在庫25以上の題が続々登場している。とりあえず10題選んで掲載したい。今日はまだまだ何便かにわたるのだろうと思う。(午後5時10分追記)


   選歌集・その67

013:クリーム(247〜272)
(まほし) みずからの手で手をつつむクリームの桃の葉エキス香る夕ぐれ
(ゆづ)ふわりふわクリーム色のスカートをひるがえしいく春の向こうへ
(わざとじゃないもん!) 顔文字に『ねぎらう顔』のみつからずコンビニで買うクリームプリン
(千)この路地を俯き歩くわれらみなクリーム色のアパートに住む
(春村蓬) 明日から会へないひとは窓際でクリーム色の子犬と遊ぶ
017:医(236〜261)
(大辻隆弘)医がかつていまだ神聖たりし頃そに籠りたる岡井隆
(星川郁乃)秋晴れの待合室は空いていて心療内科医今日は饒舌
(平岡ゆめ) まだ医師の卵なる君つるつると滑りやすげに廊下を歩む
(杉山理紀) 前もって検査日のみを告げるとき糊付けされた真夏の外科医
(春村蓬)脈をとる医師の指先感じつつまぶたの裏の夕焼けを見る
018:スカート(243〜274)
(林本ひろみ)スカートのすそひるがえし胸のうち八つの私がまた駆けていく
(透明) 偶然に街で見かけたスカートの君は知らない顔をしていた
(大辻隆弘) スカートの裾、草はらの風としてわがまどろめる頬を刷きゆく
(ゆづ) 永遠の秘密を隠したおんなのこのスカートの中は誰も知らない
(香山凛志)スカートをなびかせていただけなのにもうこんなにも風がはかない
(青山みのり) 通販の球根セットをながめつつ明日スカートをはこうとおもう
019:雨(236〜263)
(星川郁乃)ベゴニアをひと鉢枯らしかけたころ驟雨 そろそろ話してごらん
(ベティ)マスカラを省きたい朝 雨降りは何故か泣きたいことが多くて
(平岡ゆめ)スペインの雨を知らねどスペインの雨と思いて君を送りぬ
(近藤かすみ)『雨女』居らばこんな夜樋のしづくひたと見つめむ人待ち顔に
(久野はすみ)通過する列車の窓の明るさにうつむいて切る雨のしずくを
021:美(228〜253)
(星川郁乃) 美ら海になんくるないさと囁かれまた伏せておく青すぎる夏
(minto) 透明な水面を二分するやうに鋭く美しく二胡の音響く
(香山凛志)娶られず過ぎてゆく秋 夕暮れは美しすぎる公孫樹を浴びる
(平岡ゆめ)艶めいた美し過ぎる嘘がいい右手で掴むひとひらの雪
(春村蓬)美しい朝ゆゑに痛む歯のことを言いかねてをり歯科医師の夫に
023:結(226〜250)
(究峰)結ばれし糸もほどける世の習い寂しき風が稲穂を揺らす...
(椎葉時慈) しっかりと結んでしまった関係は解(ほど)けないから刃物の出番
(青山みのり)いくたびも歩いた道に銀杏がふたりの結句みたいに残る
(春村蓬) 職業を言訳としてお互ひの指に飾らぬ結婚指輪
(中野玉子) うっかりと離陸しそうに駆けていく ちょうちょ結びを背中にしょって
026:垂(220〜244)
(ベティ)垂れ下がる葡萄ひとふさ手にとればアールヌーヴォの風が囁く
(浅葱)垂直と水平の違い説明し教師の腕は大きく開く
(瀧村小奈生) 前髪がみんな斜めに垂れかかる記念写真の礼儀正しさ...
(中野玉子) 放課後の百葉箱がひんやりと短期記憶を垂れ流してる
038:灯(194〜218)
(大辻隆弘) 灯しびのごとくH(アッシュ)を響かせて「恋」を言ひけむいにしへびとは
(けこ) 初雪の日の日没の三分後 白熱灯は一斉に点く 
  (nine)電話口あなたの声にぼんぼりが灯り知らない誰かを語る
(ベティ) 雪洞を灯せば祖母のおもかげが畳の縁にはんなりと舞う
(近藤かすみ)秋の夜は見知らぬひとと出逢ひたし気まぐれに『窓の灯(あかり)』を眺む
039:乙女(198〜222)
(橋都まこと)まだ恋も自らの美も知らぬまま春の野に出て草摘む乙女
(ベティ) 膝小僧あかく染めつつ乙女らのミニスカートは素足がルール
(近藤かすみ)花言葉「スミレは愛」としたためて『乙女手帖』を文箱にしまふ
(香山凛志) 恋を恋う乙女でありし日の母の白のワンピースたんすの匂い
040:道(194〜221)
(瀧村小奈生)すれちがう人が何やら親しくて小雨に濡れた参道を行く...


 夕食を挟んで、また選歌に掛かりました。ラストスパートの皆様御苦労様です。私も、ラストスパートで時間に追われて走っているような気がして来ました。この分では、まだまだ何編かの選歌集が必要になりそうです。いずれにせよ全部出揃ったところで締めなければなりませんので、今日のところはほどほどにして、見たいテレビでも見て来ようかと思ったりしているところです。
 ラストスパートの皆様、後一息です。ゴールは近いぞ!!(午後7:30追記)


        選歌集・その68


060:韓(162〜190)
(ことら)韓文字(ハングル)の紅(くれない)を打つ雨音の強さ ソウルの秋の窓辺の
(象と空) 引き揚げの祖父母の味を思い出す韓国料理の赤の彩り
(けこ)隠岐望みすっくと立てる白波をわけて吹き寄す韓の冬風
(近藤かすみ)この町のだれかに似てる人がいる『韓国シネマ名優カタログ』
(内田かおり)本当は韓国だけれど児等の海の向こうの話は金色の国
061:注射(157〜184)
(夜さり)虹の脚の注射ぢべたに突き刺さして空のエキスをそそぐ 夕焼け
  (佐田やよい) いくつもの思いが注射筒の中ゆすられている 午後の教室
062:竹(158〜186)
(まほし)クロールの夏はしぶきをかき散らし夾竹桃を虹で彩どる
(大辻隆弘)竹のあかるい青のすきまにやや深く澄みたる青い闇が動いて
(寒竹茄子夫)寒竹(かんちく)の冬ざれの野に地の精顕(た)つ天に柿の実透きとほるまで
(夜さり)楽観論に竹箆(しつぺ)返しの四方の海 北より白き海霧(ガス)おりてくる
(けこ)竹林に降り注ぎたる光粒子跳ねて眩しき裏笹のあお
(佐田やよい)いつわりのあかりがともるあの部屋に投げ込むための爆竹を持つ
(minto) 竹宵はまだ見ぬ祭り雪洞のほのかな灯りを胸に灯して
063:オペラ(158〜183)
(寒竹茄子夫) オペラ観劇果てたる今宵薺粥(なづながゆ)食うぶるこころときにはなやぐ
(佐田やよい)窓越しに終わりの言葉告げるためオペラピンクの口紅をひく
064:百合(159〜184)
(大辻隆弘)茶碗蒸の椀のそこひにほのじろく百合根を残しひとは立ちたり
(ことら)水盤は百合の香に満つ 未だ固き乳房の疼き咎めぬままに
065:鳴(156〜184)
(まほし)さよならが遅れて届くカルピスの氷にしんとひびく雷鳴
(大辻隆弘) うすももの鳴門ひとひらさびしくて汁のなかより引き出だしたり
(ケビン・スタイン) 鳴きやまぬ猫に「返事は来ないよ」と言ってる僕も月を見ている
(佐田やよい) 鳴ることをやめてしまったオルゴール ひまわり畑のまんなかに置く
  (nine)花びらが落ちる音よりやわらかくあなたを鳴らす小春日の夜
(星川郁乃)もう虫の鳴かない庭にまだ夏の花を咲かせてさみしい夜更け
067:事務(155〜181)
(寒竹茄子夫)硝子の街の迷路透きゆく夕まぐれ女事務員薔薇買ひゐたり
(佐田やよい)事務服の胸のボタンが取れかけて この信号を渡れずにいる
(内田かおり)空き箱でパソコンをつくる児もおりて今日の積み木は事務机らし
069:カフェ(154〜178)
(橋都まこと) 丁寧にミルク温め泡立ててカフェ・ラテ淹れる 小さな幸福
(ことら) カフェ・ラ・テの泡ほどのこと 前髪を切るほどのこと 過ぎて往くこと
(小軌みつき) もう一度もどらない秋飲みほせばまばらなカフェにとける空席
(浅葱) 少し早く目覚めた朝はカフェモカを誘(イザナ)い向かういつもの職場
(近藤かすみ)鶸色の帽子かぶりて歩く人するりと『煩悩カフェ』へ吸はれつ
  (春村蓬)山奥にカフェあり山の清水もて寡黙な友の淹れるエスプレッソ
(瀧村小奈生)街路樹が葉音をたてて寄り添った二階のカフェの窓際の席...
070:章(156〜181)
(ことら) 秋の陽は零れてゆきぬ 窓縁の忘れ去られた徽章に跳ねて
(にしまき)ファゴットが眠気を誘う果てしなく続きを告げる第二楽章
(夜さり)人生の終章に入る衣擦れの足音(あおと)さらさら母のすり足
  (佐田やよい)おはなしの最終章を探し出す旅に出ましょう雪の降る朝
(星川郁乃)昔よりやわらかな語尾きみはまだ目にはみえない喪章をつけて
072:箱(152〜176)
(大辻隆弘)ひっそりと濡れしガーゼが垂れてをり百葉箱の闇をひらけば
(夜さり)暗闇がこはいあの子の骨箱に涙の跡のべに刷きてある
(究峰)思ひ出を入れたる箱の幾つかは忘れたままにたしかあるはず...
ひぐらしひなつ) 美しい箱を欲しがる少女らといて十月の窓を見ていた
(瀧村小奈生)暗闇で箱を開けたら暗やみがとび出してくる夢をみました..



 ひと休みして選歌を続ける。一応これで1巡かと思ったのだが、25首貯まった題がまだありそうなので、あるいはもう少しチェックしてみなければならないのかも知れない。いずれにしても後20分余で締め切りだし、どうせ今日全首を終えるのは無理だろうから、残りは明日の最終版に回そうかとも思っている。(午後11:40追記)


            選歌集・その69


022:レントゲン(229〜253)
(ベティ)レントゲンさえ透けるほど痩せた胸愛が足りない歌姫でした
(浅葱)レントゲンに写らぬ心の重たさを気づかぬ君にそっと舌出す
(久野はすみ)ゆがんでもふたたび戻る漆黒を袋にしまうレントゲン技師
024:牛乳(228〜252)
(田咲碕) 寝る前に習慣で飲む牛乳が独り善がりの孤独を嗤う
(nine) 牛乳を飲んだコップがしろいまま帰ってきてもまだそこにあり
(近藤かすみ)キオスクで腰に左手あてて飲む朝『牛乳の作法』通りに
(瀧村小奈生) さくさくと牛乳パック切り開く音にわたしが開かれている...
028:おたく(209〜235)
(まほし)びいどろの雨が綾なす文となるおたくさの花ゆれるポストで
(ゆづ) 新婚のおたく訪問番組でいつかのわたしたちを見つける
(浅葱)いつからか星座博士は<おたく>だと言われて夢が壊されてゆく
(春村蓬) おたくにもちやんと届けておきますと夕焼けてゐる十月の空
074:水晶(159〜183)
(島田久輔) 知らぬまに水晶体をとおりぬけ網膜上に焼きついて 恋
(堀 はんな)病去り健やかなるを感謝して紅水晶のブレスレット買う...
(内田かおり) 風呂敷を被った女児の占い師紙でつくった水晶玉で
(星川郁乃)グラスには飲み残されたソーダ水晶子の歌をあおく沈めて
(ベティ) 霧いろに水晶体を滲ませて老犬は見るアラスカの空
095:誤(129〜170) 
(里坂季夜)誤作動の記憶はシュレッドして捨てるあふれた屑を押し込みながら
(堀 はんな) 心では誤診であれと願いつつ入院の備え袋に詰める...
(大辻隆弘)ふしだらに剥がれし苔を踏みながら誤解であればよいが、と言ひぬ
(佐田やよい) 老人が昔話をくりかえす誤植のようなやすらぎの中
(中野玉子)ルービックキューブみたいに迷彩の誤解をふわり乗せるてのひら
096:器(128〜171)
(ことら) 秋の日の楽器のような金色が通りを染めてゆく並木道
  (佐田やよい)壊された楽器のようにくりかえす意味をなくしたお別れだけを
(幸くみこ)半月の器に盛ったはぐれ雲 刹那の逢瀬に灯りを消した
(yurury**)軽々と遠出の器揺らし行く児(こ)等との距離を背負ひたる秋
(瀧村小奈生) てのひらに白磁の器うっすらと水の青さを映してとまる...
097:告白(126〜173)
内田誠)遠回りし過ぎた夏の告白を乗せた最後の海行きのバス
(ゆづ) たとえばの話をやめた青空に浮かぶ告白あの夏の日の
(小軌みつき) ぶ厚めのコートでそっと潮騒だけに聞かせてみせた告白だった
(小太郎)告白を遅らせていたあの夏の匂いが残る焼けたアルバム
(ベティ)頷くと決めているんだ告白の予感に帰宅遅らせてみる
098:テレビ(132〜170)
(春村蓬) 花と木とテレビと犬と空と詩と風見の鶏と暮してゐます
099:刺(133〜174)
(水須ゆき子) 重ねれば色も言葉も濁りけりローマ刺繍を浮かす天鵞絨(ビロード)
(内田かおり) 虫刺され気にしていた児も外遊び始めるともう忘れて走る
(大辻隆弘) われを刺す晩秋の蚊にうつくしき死を与へむとしつつためらふ
(佐田やよい) 真っ白な布に刺繍をほどこして もう少女にはもどれぬと知る
  (里坂季夜)刺繍糸4本どりでざっくりと埋めてゆく日々かさねて冬へ
100:題(126〜171)
(黄菜子)百題の歌詠み終えしこの夜は静かに眠れ言の葉たちも
内田誠)ありふれた僕等の夏をうたい継ぐ題名もない言葉の行方
(ゆづ) 宿題はまた明日でいい僕たちは大人にならない夏休みにいる
(内田かおり)嬉しさと題をつけようたくさんで遊んだことを丸で描いた絵
(遠藤しなもん)涙ぐんだらいいだろう 題名をつけるとすれば「ただの友達」
(小軌みつき)またいつか手にとるだろう題名(タイトル)は覚えちゃいない今日という日を
(ぱぴこ)なりゆきで君と交わした一言が今日の日記の題名になる
(大辻隆弘) あかるさの題名として秋といふ季節があつた、かつてこの地に
(佐田やよい)宿題の答えはぜんぶ白いまま行く先さえも記せずにいる
(中野玉子)漆喰の壁に映した題名のないわたしなら愛されますか
(睡蓮。)酔ってから「そろそろ本題」とか言ってふっとキャンドル吹き消すあなた