題詠百首選歌集・その18

 ゴールデンウィークも終りに近付いたが、期待していたほどは在庫が貯まらない。もっとも、在庫数23,24という題も結構あるので、明日あたりには、在庫25という題が続々誕生するのかも知れない。
 昨日は暑い1日だった。夜寝るときに布団をどうすれば良いのか、ついつい迷ってしまう。暑過ぎると眠れないし、馴れない薄着にすると風邪を引く。毎年の繰返しだ。


   選歌集・その18


002:晴(203〜227)
(理宇)晴れたなら歩いて行こうか君の住む街まで逸る気持ちを連れて
今泉洋子)長長と結婚せずにゐたこともひらりと過ぎて晴れ渡る空
008:種(155〜179)
(ひわ) ひまわりの種をもらった 雨の日に真夏の太陽見えた気がした
(寺田 ゆたか) 柿の種のごとき半月車窓(まど)に見て缶ビール飲む連れのない旅
(里坂季夜) アボカドの種の在るべき空間にレモンをしぼるうすいかなしみ
(小麦) この恋に種もしかけもありません鳩の代わりにハートが出ます
012:赤(127〜151)
(みち。)今日だってだれかは死んでぼくはまだ生きてて赤いコーラはぬるい
(青山ジュンコ)明日にはやっとあなたに会えるからこっそり仕込む赤いペディキュア
(放物線にあこがれて)つつましき時代の英語遺しつつ古書店に赤く錆びし辞書あり...
026:地図(54〜78)
(sera5625)地図上であなたの家に続く道 真っ赤なペンで塗りつぶしてみる
(野良ゆうき) この地図は二人で書いたはずなのに青信号を一人で渡る
(百田きりん) 白地図のうえで点滅する光つないで私いまここにいる
(つきしろ) おそはるのにおいしかないあおぞらへなないろの白地図はちらばる
(橘 こよみ)先生が芝生に敷いた新聞の隅の地図から這う気圧線
(翔子) ふるさとを持たぬ心の寂しさは行き所どころなく地図を眺める
(ワンコ山田)冒険のひざからにじむ血を吸って秘密の地図が浮かぶハンカチ
027:給(51〜75)
(川内青泉) 配膳も片づけもみなひとりだち一年生の初の給食
(天国ななお)給茶機で入れたお茶には茶柱が立たないことを知りながら飲む
(中村成志) 給食を護衛してゆく白帽子つばめが渡り廊下くぐった
(五十嵐きよみ) 厳かに秘密のありかを暴き出す手つきで給仕が拾うスプーン
(野良ゆうき) 毎月の給料からの天引きのようにこぼれる存在理由(レゾンデートル)
032:ニュース(27〜52)
(青野ことり) きょう春が生まれましたよひだまりでテレビニュースは言わないけれど
033:太陽(27〜51)
(小春川英夫)休日のカーテン越しの太陽に真綿で首を絞められて、朝
(帯一鐘信)太陽の跳ねた炎がくちびるにあたる予感で劇場を出る
063:浜(1〜25)
(ねこちぐら)浜降りの神輿勇まし浪飛沫く水際に湯気のまた立ち上る
(みずき)砂浜を凪ぐ夕映えは春愁のいろ美しき私の海図
(坂本樹)砂浜になってぼくらは待っているきみがひとりで海に来る日を
(畠山拓郎)あの頃はなんでもできる気がしてた夏の浜辺で打ち上げ花火
(フィジー) 砂浜の想い出達は流されてまた戻される波の悪戯
064:ピアノ(1〜25)
(ねこちぐら)連弾のピアノの音色絡み合い若き奏者の思いを漏らす
(船坂圭之介)春風に伴はれ来し訣別の譜かもピアノの音色かなしく
(みずき) 何気なく亡母(はは)のピアノへ触れし夜の遠き旋律わが耳に舞ふ
(此花壱悟)灯油売る車駱駝のふりをしてピアノの音を連れて過ぎ往く
(坂本樹) ゆびさきがピアノにふれてしまうまでわたしは泣いていていいですか
(暮夜 宴) 瑠璃たては低く飛ぶ日に鳴り止まぬこころの中の「わたしはピアノ」
065:大阪(1〜25)
(船坂圭之介)その昔(かみ)の歴史は言はず嫋々と大阪湾の浪しづかなり
(行方祐美)大阪の訛りはいつも雨を呼ぶ主治医というにはあまりに近く