性比と年齢(平成17年国勢調査)

 何度か書いたように、国勢調査データの整理と分析が私の最大の道楽で、数年前に「市町村盛衰記――データが語る日本の姿」(平16・出版文化社)を刊行したのだが、その後平成17年調査の内容についても、ぼつぼつ資料の整理を進めている。基本的なデータの整理は既に終り、このところ派生的なデータを整理しているのだが、先日、外国人関係のデータについて骨子を御披露したのに続いて、今日は性比と年齢についての骨子をお示ししたい。


1 性比
 平成17年10月1日現在の我が国総人口は、1億2776万7994人、うち男性が6234万8977人、女性が6541万9017人であり、性比(男性/女性の比率)、は95.31である。つまり、女性人口100人に対し、男性人口は95.31人だということであり、女性の数の方が少し多い。後でも触れるが、その原因は、女性の方が長寿だということに尽きる。ここ数回の傾向を見ると、ずっと96%台が続いていたのだが、前回の12年調査で96%を切った。高齢化による女性人口の増大が最大の原因だろう。
 なお、もっと長い期間で見ると、大正から昭和初期における性比は100を超えており、昭和20年に89.0と激減し、昭和25年以降は96%台が続いていたものである。昭和20年の異常値は、戦死者が多かったことが最大の原因だろう。
 ところで、平成17年データでは、1歳未満の人の性比は104.36と、男性の方が4%以上女性を上回っている。この傾向は年齢が増えてもずっと続き、22歳までは男性の数が女性を4〜5%上回っている。以下その比率は徐々に下がっては来るが、性比が逆転するのは47歳で、はじめて100を切る。細かく見れば、48歳と50歳でまた男性がわずかに多くなるが、それ以上の中高年齢層は、いずれも女性の数の方が多くなる。69歳で性比は80%台となり、75歳で70%台、79歳で60%台、82歳が50%台、83歳で40%台、89歳で30%台、94歳で20%台と、高齢になるにつれて、女性の数が男性の数を大きく上回ることになる。例えば、94歳のおばあさんの数は、同年のおじいさんの数の4倍くらいになる。
 もう少し大きく括ってみると、0〜14歳の性比は104.9、15歳〜64歳で100.8と男性優位であり、65歳以上では73.5と女性の比率がずっと高くなる。更に、高齢者のうち、75歳以上では58.7、更にそのうち85歳以上では38.3、100歳以上では17.4と、女性の比率が年齢とともに圧倒的に高いものとなって来る。言い方を変えれば、こどもや青年は男の方が5%くらい多く、お年寄りはおばあさんの方がずっと多いということになる。

 
 話を少し戻す。以上からお判りのように、若年層では男性の数の方が多く、年齢とともに女性の数が男性の数に近付き、追い越すわけだが、年齢別の人数の累計を見て行くと、72歳と73歳の間で、やっと男性の数と女性の数とが均衡することになる。いわゆる結婚適齢期には男性の数の方がかなり多いわけだから、相手の数に不足があり、男性の方が結婚難だという結果になっている。
 なぜ若いうちには男性の方が多いのか。生物学的には、オスはメスより生存力が弱いのだそうだ。したがって、人間の場合にも、男女の数のバランスをとるためには、男子の出生率の方が少し高くなければならない。このため、新生児の数は男の方が多いという摂理になっているのだという。ところが、医学の進歩などにより、乳幼児や若年層の死亡率は大幅に減少したし、戦争などによる男性の死亡も減った。もともと目減りを予想して多めに作られていた男性が、生き長らえるようになって来たわけで、このような神の摂理の計算違いの結果、高齢になるまでの間は、男性の数の方が多いという結果になったようだ。


 性比を都道府県別に見ると、神奈川県が102.2%と男性の方が僅かに多く、埼玉県、愛知県、千葉県がこれに続いて100%を超えており、その他の都道府県はいずれも100%未満で、女性の数の方が多い。逆に性比が最も低いのが鹿児島県の87.8%、これに次ぐのが長崎県、宮崎県、高知県熊本県大分県和歌山県佐賀県山口県等で90%を切っている。いずれも九州をはじめとする西日本の県であり、概して言えば、高齢者の多い県の性比が低いということが言えそうである。女性の方が寿命が長いということから言えば、両者の傾向は概ね合致するというのは当然の結果かも知れない。


2 年齢
 性比とも関連するが、次に年齢を見てみよう。平成17年の年齢別構成を見ると、14歳までの「こども人口」が全体の13.7%、65歳以上の「高齢者人口」が全体の20.1%という結果になっている。平成2年以来の数値を見ると、こども人口が18.2%→15.9%→14.6%→今回の13.7%と着実に(?)減少しており、逆に高齢者人口は、12.0%→14.5%→17.3%→今回の20.1%とかなり顕著な増大を示している。因みに、高度成長期の昭和40年の構成を見ると、こどもが25.7%、高齢者が6.3%と、全く異なる様相を呈しており、我が国が青春期だった昭和40年と、高齢・成熟期を迎えた現在との違いを如実に示している。
 
 前述の性比の話とも関連するが、男女の別をみると、こどもの構成比は、男性14.4%に対し女性13.1%と男性優位にある。性比のところでも触れたように、その主因は、新生児に占める男子の割合が高いということだろう。他方、65歳以上の高齢者の構成比を見ると、男性17.4%に対し、女性22.6%と、女性の方が圧倒的優位に立つ。

 それでは、年齢構成を都道府県別に見るとどうか。
 こどもの率が圧倒的に高いのが沖縄県で18.7%、これに滋賀県佐賀県が15%台で続き、次いで愛知県、福井県福島県、宮崎県、長崎県等が14%台で続く。逆に低いのは東京都の11.3%がトップであり、秋田県、北海道、高知県が12%台、京都府徳島県山口県等が13%台で続く。
 それでは高齢者の率はどうか。最大が島根県の27.1%、秋田県の26.9%、高知県山形県山口県の25%台と続く。逆に低いのは、沖縄県の16.1%を筆頭に、埼玉県、神奈川県の16%台、愛知県、千葉県の17%台と続く。
 
 両者を総合した数字として、こどもの数を高齢者の数で割った数字、これを「幼/老比率」と呼んでも良かろうが、その「幼/老比率」を年次別に見ると、昭和40年の409.4%を別格として、平成2年の151.0、平成7年の109.6、平成12年の83.9、平成17年の68.3と、その減少ぶりが著しい。
 平成17年の「幼/老比率」を県別に見ると、沖縄県の116.1%が唯一100%を超えて図抜けた存在になっており、愛知県、滋賀県、埼玉県、神奈川県が80%台でこれに続く。逆に最も低いのが秋田県の46.2%、高知県島根県の50%弱、山口県徳島県等が50%台でこれに続く。これらの地域では、こどもの数は老人の数の半分前後しかいないということになるわけである。

 
 これらのデータを、いずれ市町村単位に細分化して整理してみようと思っているのだが、国勢調査の年齢別データは極めて詳細であり、それを整理するのもなかなか大仕事である。特に、私のパソコン技術拙劣のせいなのかも知れないが、そのままでは集計しにくい表の構成になっており、その再編集には相当な手間が掛かりそうである。市町村別のデータをぼちぼちと整理して行くには、後1年かそこらは掛かるのかも知れない。