参議院選雑感

 参議院選挙が終わって、最悪の事態は避けられたとホッとしているところだ。それにしても、先の総選挙のときの与党の圧勝との落差は何だったのだろう。総選挙の際に自民党に勝たせ過ぎたという選挙民の「反省」があったところに加えて、年金をはじめとする失政、学園祭内閣の閣僚の失言や不手際等々により、その「反省」が予想以上の激しい結果になって表れたということなのだろうか。
 
 安倍さんが政権を握る前後、何度か安倍批判を書き、「識見や経験が不十分なままで宰相の座に就いたのは安倍さんの不幸だ」という趣旨のことも書いた記憶があるが、そのことがあからさまに露呈されたと言っても良いだろう。もっとも、安倍さんの実行力は予想外のものだった。国民投票法の制定、教育関係諸法の改正等々、「戦後レジームからの脱却」という安倍さんのスローガンは、かなりのところまで実現したとも言えるだろう。私は、これらが安倍内閣の最大の「失政」だったと思っており、それに比べれば、「年金」や「失言」は、比較的マイナーな失政だったという気がしないでもない。
 
 今回の選挙結果が、その「マイナーな失政」を主因とするものだとすれば、今回の選挙の結果を手放しで喜んでいるわけにも行かない。小泉さんの「思い付き的・国家主義的・独裁的改革路線」を依然として懐かしんでいる人が多いのだとすれば、次の選挙までに世論がどう揺れ動いて行くのか、心配の種は尽きない。もう一つ、民主党の躍進は良いとして、いわゆる革新政党の凋落も不安要素の一つである。憲法問題をはじめとして、野党がどこまで「抵抗勢力」としての歯止め機能を貫徹できるのか、将来に不安が残らないでもない。
 
 そんな不安要素が残るとは言え、また、国民の選択の動機がどこにあったにせよ、安倍内閣の独裁的、国家主義的傾向に「ノー」という結果が出たこと、そして、「悪しき改革」が進められない国会構成になったことで、ひとまず祝杯を上げたい心境である。

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 実は、もう少し長い感想を書こうと思ったのだが、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌で、毎月コラムを書かせて頂いている)に載せようかという気になった。そうかといって、それが活字になるのは1月先のことなので、かなり圧縮した内容で、とりあえず露払いをさせて頂いた。