題詠100首選歌集(その10)

 昨日あたりの暖かさで、桜もほとんど満開になった。4月に入ってからの花見を予定していたので、少し予定が狂ったところだ。そう言えば、この数年開花が早いようだ。これも地球温暖化の影響なのだろうか。
 選歌の物差しを渋くした積りはないのだが、今日の「その10」は、残念ながら残った歌がいつもより少ないようだ。


  選歌集・その10


002:次(170〜194)
(流水) 梅が散り次に桜が咲くまでのロゼワイン色のルージュ冷たし
(拓哉人形) この次へ繋げるために問いかけの形で終える君へのメール
003:理由(157〜182)
(流水)捨ててきた理由も忘れ遠ざかるホームに残した顔も見えない
(ほたる)許される理由は白いハンカチに包まれた時花びらになる
012:ダイヤ(97〜121)
(空色ぴりか) ダイヤルを回していたこの指先ももう忘れたかそのひとのこと
(橘 こよみ) かたむいたレンズ 土星の環の中にダイヤモンドが漂っている
013:優(82〜107)
(月子)ただいまの声が運んでくる風はふわりと君の優しさ薫る
(橘 こよみ)まどろめる優先席の学生の肩にも春のひかりは満ちて
018:集(54〜80)
(髭彦) 百円で売らるる本の片隅に歌集・句集のあまた並びぬ
(大宮アオイ)集めれば両手に余りこぼれゆく切れ端ばかりの君の面影
ひぐらしひなつ)朝深く追憶の野に集いきて草食むものを驟雨が濡らす
(丸山汰一) 集まって撮った写真の端っこであきらめきれない顔をしている  
019:豆腐(53〜80)
(水須ゆき子) 春が春が追いかけてきて味噌汁に入れる豆腐を賽の目に切る
(髭彦) 唐津なる豆腐料理の名店で吾妹と食みし朝餉忘れじ
(野良ゆうき)こだわりの豆腐の棚のその横にこだわりのない豆腐が並ぶ
020:鳩(55〜79)
ひぐらしひなつ)鳩を出すような手つきで絵を描いてくれた、十月、水のほとりで
025:あられ(26〜52)
(はこべ)花あられつくりて待つは古き友選ぶ茶碗を迷いておりぬ 
(水須ゆき子)結局はだれも食べないひなあられ置けばしずかに光る食卓
(大辻隆弘) 北辺の街をおもへば掻き暮れて汝が髪の上にたばしるあられ
034:岡(1〜25)
(玻璃)花火まち花札あそぶ川べりに日差しはきつし長岡の夏
(船坂圭之介)一介の御用歌人と成り果つる岡井隆の髭の寂しき
(みずき)岡に摘む草の間(あはひ)の指がしら触れゆく風は青き春なる
(那美子) 嘗て吾の母が過ごしし岡山の  街並優し風のふきゆく
037:V(1〜26)
(猫) Vの字がハートマークの代わりだと君は気付いているのだろうか
(髭彦)タートルにVネックをば重ね着て冬を過ごせり背広厭へば