題詠100首選歌集(その14)

 風雨激しい1日。ちょっと近所まで出かけたら、桜はすっかり散っていた。


    選歌集・その14

012:ダイヤ(122〜149)
(kei)お揃いのセーターゆるり編んでいくダイヤ模様はちょっぴりいびつ
(池田潤)泣くのならきっと今でも不得意なダイヤで君の言葉を削る
(ほたる)砂時計途中で返す誘惑にダイヤルロックがまだ外れない
(文月育葉)恋占い ダイヤのカードばかり出てハートのA(エース)を探す真夜中
(さくら♪) 球児らがダイヤモンドで風になる 蒼い玉響(たまゆら)輝ける春
(五十嵐きよみ)あてつけにメールで送る左手にダイヤを飾った写真を撮って
(萩 はるか)ダイヤより真珠が似合う祖母の手に炊き込みご飯の篦あたたかく
(惠無)朝方のダイヤの乱れを今更に謝られている夕焼けこやけ
018:集(81〜105)
(月子) アルバムを開き思い出集めおり 電話も鳴らず暮れゆく日曜
(一夜)集団で登校しゆくこども等に 春の気配も絡まりて行く
(ほたる) 薄桃の花びら集め戯れ言のひとおつふたつと数えたき夜
(橘 こよみ)立ちつくすてのひら さくらのはなびらを集めて永い一日(ひとひ)が終わる
(ME1)星屑を集めて祈り捧げるは月蝕の夜 重ねゆく恋
019:豆腐(81〜105)
(月子)この町ははじめてなのに懐かしく豆腐屋の声が似合う夕暮れ
(ME1)ありきたり過ぎる幸せ湯豆腐を突ついて君と笑う半月
023:用紙(55〜81)
(大宮アオイ)心象を画用紙に描く群青と山吹だけで塗りつぶされて
(七十路淑美)テスト用紙作るも答うもややこしと任終えし後の勝手な思い
025:あられ(53〜79)
(駒沢直)雛あられ開けないうちに4月となりベランダで聴く遠い春雷
(村本希理子)あられ菓子がぱすてる色(カラー)に染まつても雄雛の春は蒼ざめたまま
(志保)約束の 時間も過ぎて 待ちぼうけ 手持ち無沙汰な あられ降る午後
031:忍(27〜51)
(髭彦)蓮枯れて群鴨されば淋しさのひととき流る不忍池
(はこべ)会えぬ日はいつものカフェでコーヒートサンドウィッチで読む『忍ぶ川
(大宮アオイ)貴方には忍んで伏した目の中に炎のあるを気付かれている
032:ルージュ(27〜51)
(小籠良夜)つとめ終へルージュ落せば踊り子の素顔あらはに魔女と呼ばるる
(泉)疲れ顔夜の鏡に近づけてルージュ拭へばつくづく独り
(はこべ)オレンジのルージュが似合う人だったミヤコワスレ墓所に供えき
(大辻隆弘) 咲く花がルージュの色に染む朝を悲しみの村みえて眩みつ
(水都 歩)をんななら死ぬまで紅をと言ひし女(ひと)白髪に赤きルージュ似合ひし
045:楽譜(1〜25)
野州)弾むこゑを楽譜に閉ぢて記憶するある春の夜の長き電話の
(船坂圭之介)紙魚の痕(あと)をちこちに在る古めける楽譜に低くくアダージョの鳴る
(夏実麦太朗) フルートのソロが始まりホッとして次に備えて楽譜をめくる
046:設(1〜25)
(詠時)この星の設定温度変えようとリモコン探しに世界は騒ぐ
048:凧(1〜26)
野州) 肩で風切りてきりきり舞ひながら糸切り凧は墜ちゆくばかり
(木下奏) 凧揚げをしているように空にいるキミを見ていた一周忌の日
(みずき)上げ凧は放物線の糸曳きて雪の無音を空に映せり
(ちりピ)ショッキングピンクの凧が自転車を追いかけてくる海へゆく道...
(秋ひもの)凧糸を引く指先が大きくて寂しいものに触れた気がした
(髭彦) 荒川の河川敷にて大凧を娘と揚げし日々の遠かり