題詠100首選歌集(その15)

 2日間旅行して来たら、在庫が結構貯まっている。この分では、明日も選歌集が掲載できそうだ。もっとも、明日は予定がいろいろあるので、あるいは時間がとれないかも知れない。


   選歌集・その15


002:次(195〜219) 
(里坂季夜)次は誰ぼくを作ったひとたちがことわりもなくまたひとり逝く
(新野みどり) 次に行く旅の計画立てるため夜はパソコン独り占めする
003:理由(183〜210)
(野田 薫)春を待つ理由をなくし駅を出てまた駅に着くだけのジオラマ
(たかし)北国の春の真夜中理由もなく万年筆を掃除している
(はせがわゆづ)欠け落ちた理由はいつもぬるま湯のような温度でほほえんでいる
(里坂季夜)笛吹きについてゆかない理由などとっくになくて手帳を埋める
(新野みどり)理由なく微笑みながら昼休みふっと途切れた話題を探す
005:放(165〜190)
(砺波湊) 放校になった過去持つ我が祖母の二の腕の内に彫られし星座
(新野みどり) 勢いで放ってしまった言葉悔いトイレでひとり鏡見つめる
006:ドラマ(159〜185)
(拓哉人形) 惰性にて動く乾いたその指をドラマのように見る鏡越し
(五十嵐きよみ) ドラマにはなりそうもない日常の些事だったはず火を借りたのは
佐藤紀子)ヒロインが不安な顔をするときに連続ドラマは「明日に続く」
(里坂季夜) 打ち切りの深夜ドラマの結末をくみたててみる明るむ窓に
008:守(150〜174)
(五十嵐きよみ) さっきまで会っていたのに留守電がもう吹き込まれ 外は晴天
014:泉(111〜139)
(七十路淑美) 祖先住みし山の廃屋訪(おとな)えば泉に散り浮く山桜花
(橘 みちよ)午前三時いたみどめ切れ目覚めれば泉のやうな闇にひたる身
(萩 はるか)ぬめる肌抱く人もなくわれひとりしがらみ棄てて浸かるモール泉
015:アジア(107〜139)
(青野ことり) 六年の任期を終えた妹は東南アジアの熱気をまとう
(川鉄ネオン) アジアとはどこからどこかも知らなくて午後の露店にうどんを啜る
(佐原みつる)分からないことがあまりに多すぎてアジアンサラダを二人で分ける
(砺波 湊)戯れにアジアン・スイーツなどと呼び塩大福を一口かじる
020:鳩(80〜104)
(ほたる) リミットの12時告げる鳩時計帰る帰ろうカボチャの馬車で
(絢森)皓皓と鳩は鳴きだす真夜中に小人の螺子を無くした部屋で
(kei)まなぶたの奥にかすかにある微熱あの日と同じ鳩笛を吹く
021:サッカー(76〜110)
(暮夜 宴)躓いたおかげで見えた風景はサッカーゴールに飛び込む夕陽
(ezmi)ゆらゆらと母は日射しに溶けてゆくワンピース青きシアーサッカー
(青野ことり)みずいろのサッカー生地の袖なしのすとんと四角いワンピース 夏
026:基(52〜79)
(小早川忠義)疲れとは肉体ばかりと限らざり塩基のやうなる煙草の苦さ