題詠100首選歌集(その18)

 一昨日あたりには9題まで在庫が貯まっていたのだが、10題目が25首の手前で足踏みしていて、勝手に決めた規定数(在庫25首以上の題が10題)になかなか届かない。今日になって、やっと規定数に達したところだ。このところ荒れ模様の天気が続いたが、やっと天気も安定して来たようで、久々に明るい日差しが差している。


       選歌集・その18


009:会話(149〜173)
(砺波湊)好物を執拗に尋ねられておりチェコ語会話の教本のなか
(村木美月)何気ない会話の中に潜ませる「たくらみ」という気になる木の実
(五十嵐きよみ)世界中似ているだろう知り合ったばかりの恋人たちの会話は
(里坂季夜) 他愛ない会話途切れて午前四時星は宇宙へ魚は海へ
011:除(139〜163)
(惠無)ふつふつと曲がったとげを取り除く紅い満月味方につけて
(砺波 湊)除光液爪に沁みてく冷たさがかすれた記憶をくすぐっていく
(越後守雪家) 音もなき世界は雪に覆われて目覚めぬ街を除雪車が行く
(本田鈴雨)八月のかどの八百屋の日除け幕 風をはらめばトマトかがやく
016:%(113〜138)
(萱野芙蓉) アルコール分7%で離脱するたましひ桜ふぶきとあそぶ
(村木美月) 綿100%(パー)Тシャツ素足素っぴんで自分にやさしい一日となる
(橘 みちよ)雨音のくるほしき夜窓あけて湿度百%(パーセント)の闇吸ふ
018:集(106〜132)
(青野ことり)笑いしゃべりしゃべり笑ってひとときを少女に戻る女の集い
(花夢) 春に降るあめ あのひとの大好きという言葉には蝶が集まる
(ワンコ山田)ゆすっても心残りは溶けなくて水上置換で集めて燃やす
(斉藤そよ) 庭先に集う野鳥に高みからしだれざくらは過去を話せり
019:豆腐(106〜131)
(青野ことり) あたたかなスープに豆腐くずし入れ名のみの春のただなか泳ぐ
(田丸まひる)あのひとのかさぶたひとつ撫でられず玉子豆腐を攻めるスプーン
(蓮池尚秋)ぎこちない敬語のままでもう少し近づきたくて豆腐を削る
(ワンコ山田)夕映えに豆腐屋のラッパすれ違い絶対音感試されている
038:有(26〜52)
(Asuka)家事だって有償ならねと文句言い、こっそり買ったバッグを隠す
040:粘(26〜50)
(松下知永)粘りつく潮風に町錆び落ちてはづんだ電話多くなる父
(椎名時慈) 粘液を舌に乗せれば執着の糸が筋引く週末の午後
(月子) 子供らが作った粘土の動物が喋りはじめる夜の教室
(岡本雅哉)ラインぎわ粘るドリブル フォワードの瞳静かに光ひきずる
041:存在(26〜52)
(振戸りく)存在をアピールしてるのでしょうか ネコのしっぽの微妙な動き
(西原まこと)存在をかくして後をつけることの楽しみということの哀れみ
043:宝くじ(26〜50)
(中村成志) 宝くじ売り場の中で宝くじ売る人のごと地蔵微笑む
(椎名時慈)地球から月のウサギを撃つように宝くじ買う 明日は晴れる
(泉)「女性史」の栞に挿む宝くじ女売られし女買はれし
055:乾燥(1〜25)
(木下奏)あの人がいないキッチンに一人立ち乾燥ワカメを泳がせている
(穴井苑子) 乾燥機の中でふわふわまわってます あんまり夢のないものたちが
(こはく)昨日よりうまく待てない火曜日に乾燥剤をまとめて捨てる