題詠100首選歌集(その23)

 昨日、今日と雨。昨日の最高気温が14度、今日が13度だという。昨夜は少し冷えたので、床暖房を付けたくらいだ。そう言えば、昨日書き落としたのだが、勲章授与・皇居参内のあった一昨日は、薄曇りで、暑からず寒からずの絶好の天候だった。叙勲の式典は、各省庁別にあと数日続くらしいが、雨の日には皇居での記念撮影は取りやめらしいし、それに和服を召した御婦人方は何かと大変だろうと思う。そういった意味では、我々はラッキーだった。
 ついでにもう一つ。講談師の宝井馬琴さんが我が家の筋向いにお住まいなのだが、馬琴さんも今回叙勲を受けられた。祝電を配達するNTTの方は、随分効率が良かったことだろうと思う。


            選歌集・その23


004:塩(201〜225)
(岩井聡)振り返る間もなく塩となる妻にあたらしいのは夜の樹ばかり
(はせがわゆづ) 飽和することを知らない瞼裏で塩分濃度はただ増すばかり
内田誠) やさしさをわけ合う部屋で塩味の言葉を飲み込む練習をする
(野田 薫) 傘ばかり並んだ予報 塩味のきついサラダを今夜も食べる
005:放(191〜218)
(小林ミイ)鶏が死んで一番泣いたのは放課後いつも一人だった君
(海子) 放ちやる魚の身するりと飲み込みてさわさわと揺らぐ春の水面は
(はせがわゆづ) 虹色の放物線になる途中だった二人の夏の濃い影
(やや) かけがえのない魂をとき放つ空どこまでもかなしみの青
006:ドラマ(186〜211)
(水-mina-)ドラマならきっと今ごろあのひとが僕を想って月を見る筈
(香-キョウ-) ここにいる人の数分ドラマあり 立ち止まり思う 横断歩道
(アスパラ) 今夜から始まるドラマを見る君と来たことのない海に来ている
007:壁(187〜212)
(水-mina-)もう誰も見つけてくれぬと知っていて相合傘を壁にかく夜
(里木ゆたか)世の闇を遠ざけている白壁に手を付いて押す二十四の春
(翔子)白萩のこぼれる道のなまこ壁古き衣を売る店もあり
008:守(175〜201)
(水-mina-)守れずに終わってしまった約束も忘れられない理由のひとつ
(沼尻つた子)のどぼとけひとつとして無き女子房に女性看守の点呼の低く
(秋月祐一) ペットボトルを両手で持つて飲んでゐるきみを守る、と決めたあの夏
(やや)太陽の雫こぼしてたんぽぽは車いすにある老いを見守る
015:アジア(140〜165)
(五十嵐きよみ)二人して東南アジアに凝っていたころに覚えたフォーの茹で方
(イツキ) 五月雨に窓を見上げる部屋の隅アジアンタムはやさしく茂る
(吉浦玲子) スコールの町を歩めるムスリムの少女よアジア的カオスをまとふ
022:低(108〜136) 
(斉藤そよ) ずいぶんと低いところにお月さま 今夜は誰をみまもっている 
(佐原みつる) 低気圧が列島を覆う週末をテーブルランプを灯して過ごす
(emi ) 少年の声低くなる春休み逆光のなか喉仏みる
(空色ぴりか) そのひとが指でたどった南天の低きところにカノープスあり
(ワンコ山田) 押し出して欲しいこころを見透かして水の分子は低くつぶやく
(川鉄ネオン)毎日にちいさな変化を自転車のサドルを2センチ低くしてみる
023:用紙(107〜131) 
(一夜)鉄筆と蝋引用紙誇らしく ガリ版刷りし我図書委員
(ワンコ山田) 何もかも素直に言えぬわたくしをクロマトグラフィー用紙に落とす
(砺波湊) 『夜の林檎』のつづき読みたし 拾いたる題名だけの原稿用紙
037:V(53〜79)
(ME1) Venusの輝く天を待ち焦がれ ひしめきあおうと弧月は巡る
(村本希理子) 思ひ出せないことがたくさん Victorのrの角度にくび傾げても
(大辻隆弘)ヴラウスのVの谷間に添ふ翳のあはあはとはつなつは来たれり
068:踊(1〜28)
(夏実麦太朗)三歳の姪に懐いてもらおうとよくわからない踊りを踊る
(藻上旅人)踊りたくなる日はいつも南向き月曜の朝恋が始まる
(中村成志)いつまでもあなたを抱いていたいから踊りつづける 歌よ終わるな