題詠100首選歌集(その28)

 今日はうすら寒い雨。昨日は7月、今日は4月の気温とか・・・。


      選歌集・その28


020:鳩(131〜156)
(本田鈴雨)ふくよかに椿いちりん咲かせたる鳩居堂の葉書つかへずにをり
(睡蓮。) さりげなく大人の女匂わせる絵葉書買いに鳩居堂まで
026:基(105〜131)
(村上きわみ)基準値をはるかにこえる夕闇をからだにいれて持ち帰るひと
(ワンコ山田)複雑な基板なぞっている指が星座の話になってゆく君
(天野 寧) 基準値を超えたコレステロール値に怯えてもなお止まらないチョコ
(虫)秘密基地みたいに木々がつつみこむ真っ赤な屋根も褪せてゆく午後
033:すいか(83〜107)
(kei) これが夏これがすいかの食い方と言ってるような男の背中
(湯山昌樹) すいかの種子丁寧に取り食べた後そっと埋(うず)めた遠いあの夏...
(村上きわみ)それは祖父の烈しさなればくろぐろと重きすいかは鉈をもて割る
(萱野芙蓉) うすあかいすいくゎの汁を拭いてやるさつきいぢめた従弟のシャツの
040:粘(51〜75)
(ほたる) 粘土板の隅に書かれたマジックの名前薄れる3月、卒園
(原田 町) 多血質と粘液質が連れ添いて公孫樹の若葉いくたび仰ぐ
059:ごはん(26〜50)
(新井蜜)手をつなぎ帰れば今日はひっそりと炊き込みごはんと猫が待ってる
(村木美月) 炊きたての白きごはんの温もりにどっぷりつかっていたい月曜
060:郎(26〜50)
(野坂 りう)郎よりも朗がいいとか いもしない息子の名前を考えている
083: 名古屋(1〜25)
(みずき)名古屋から乗る青春が寄り添ひて風澄む秋の風情もたらす
(夏実麦太朗)空っぽな重い心を乗せている名古屋止まりのひかり最終
085:うがい(1〜25)
(みずき) うがひする朝な朝なの冷たさは我が命脈ぞ朝露を踏む
(松下知永)美しき営業女子はうがいする無防備にのど反りてまひる
(草蜉蝣)しらむあさうがいするとき公園の四角い空に月のぬけがら
086:恵(1〜27)
(船坂圭之介)ひといきに生きし気がせり恵まれて喜寿迎へしを謝すべきや否や
(夏実麦太朗) パソコンが遅いだ何だと文句言い恵まれている今日が過ぎゆく
(中村成志)きっぱりと潮風は吹きはつなつの恵みの煮られゆくラタトゥイユ
(酒井景二郎) 惠まれた孤獨と言つてくれていい 土砂降りの中飮む罐珈琲
087:天使(1〜26)
(みずき) ぎらぎらと真夏の海を感じつつ けふ天使なる吾子を泳がす
(那美子) 歴史書で「白衣の天使」と記されし 女(ひと)の本音が聞きたき夕べ
(磯野カヅオ) つかのまの天使終れば野茨の陰に隠れて煙草銜へり
(中村成志)今ここに天使が座っていたよってまるまるふとる畑のキャベツ