題詠100首選歌集(その52)

 やっと100題目が50首に達し、2順目となった。去年の記録を見たら、最終題が2順目となったのが10月9日だから、それよりは大分早いペースだ。もっとも、100題目には二重投稿も含まれているので、正確に言えば「50首に達した」とは言えないのだが、これは毎度のことなので、目をつぶっておこう。
 今日が「選歌集・その52」だが、去年の9月6日は「選歌集・その41」となっている。その面でも、去年よりかなりペースが上がっているわけだ。これからが楽しみだ。

           
            選歌集・その52


042:鱗(129〜153)
(吉浦玲子) 真夏日の路上をいましよぎりしか蛇の鱗のごときひかりぬ
(桑原憂太郎) 担任は優しい魚見上げれば午後の授業に鱗が光る
(emi)鱗紛はひっそり闇に撒かれゆく巡りていのち新しきもの
(内田かおり)  河口近き橋から見えし銀鱗の群れ上るさま力に満ちて
佐藤紀子)白雲の薄き鱗の一つとし透き通りさうな昼の月浮く
(たかし)秋鰺の鱗が光る波止にいて足の指には蟻が集まる
043:宝くじ(126〜151)
(吉浦玲子)シャッターの降りたる宝くじ売場夜の果てより来し猫が見る
052:考(102〜126)
(萱野芙蓉) 陽にゆるむゼリーをすくひ考へる無邪気なひとの傷つけかたを
(西巻真) 死後硬直(リゴル・モルチス)われの内部に兆しつつだらだらと思考続く真夏日
(近藤かすみ)カリフラワーを小さき房に分けながら脳の働きなど考へる
053:キヨスク(105〜130)
(やすまる) 真昼間の眠りかけてるキヨスクの雑誌の隣に私を曝す
(ゆふ) キヨスクに行くたびであふ人がゐて気になりだした自分が怖い
(幸くみこ) 早朝の東京駅のキヨスクでネクタイを買う男の事情
(ワンコ山田) キヨスクの前に着陸するように狙うドアから発つ無人
068:踊(80〜104)
(帯一鐘信) 青春は湖よりも暗がりで踊っていたい記憶の絵画
(大宮アオイ) 踊り場に射した光に誘われて歩みを止める午後の図書館
(五十嵐きよみ) 螺子が切れふいに踊りがやむときの唐突さにて終わる幸せ
(佐原みつる)異なった時間の長さがあるようで盆踊りの輪に子どもを放つ
077:横(53〜77)
(萩 はるか) 束ね髪ほどいた君の横顔を僕は知らないこいびと未満
(ゆふ)横並びに道幅いつぱい少女らが行き交ふ小径黄花コスモス
(ジテンふみお) 洗車する横顔に虹 フェンダーの傷の由来をきらきら話す
078:合図(51〜75)
(イツキ) 過ぎ去った合図ばかりが気になって歩き出せないままに、また冬
(kei) 蟋蟀の鳴くのが合図真ん中の秋を私も歩いて行こう
080:Lサイズ(52〜76)
(月子) 真っ白な君のTシャツLサイズ 風に吹かれて踊りだす夏
099:勇(26〜50)
(酒井景二郎)讀みかけの吉井勇と罐麥酒としなびた夕日そんな土曜日
(拓哉人形)安っぽいその武勇伝 我ひとり奪うことさえできぬあなたの
(ほきいぬ)ゲームでは勇者の僕も現実は人にいえない恋をしている
100:おやすみ(27〜52)
(ME1) 巡り会い繰り返された朔望に告げるおやすみ 終演の晩
(七十路淑美)いつ来るか知らねど命果つる日もさりげなく言わむおやすみなさい
(新井蜜)おやすみを言わず別れてひとり居る夜更けの窓に繁き雨音
(拓哉人形)この頬に触れる寝息にくすぐられ同じ夢路を辿る「おやすみ」
(野良ゆうき) おやすみと言ってまなこを閉じるとき世界をそっと抱きしめてみる
(寺田ゆたか) 終(つひ)の日の眠りの時もおやすみと言ひて別れむまた逢はむため