累進課税の強化を

 先日、朝日新聞の「声」に投稿したのだが、どうもボツになったようだ。この5年ばかりの間に、「声」には10回ばかり掲載されたのだが、そろそろツキが落ちて来たのかも知れない。考えてみれば、あまり変わり映えのしないこの種の投稿が、そうそう載るわけのものでもないだろうとは思う。



       むしろ累進課税の強化を

 
 社会保障や医療制度の充実など、国民の安心を確保するためには、消費税の増税は避けられないものだと私は思う。しかし、消費税が大衆課税であるだけに、同時に、所得税等の累進課税の強化が図られるべきだと思う。かつて、地方税を含め80%を超えていた所得に対する税率は、いまや50%まで下がっている。利子課税や配当課税は原則として分離課税だから、高額所得者の実質税負担率は、いよいよ低いものとなっている。
 最近配当課税等の軽減を主張する向きもあるようだが、これは私の考える「あるべき姿」とは全く逆行する主張であり、納得できない。もとより、それなりの理由はあるのだろうが、それは小手先の政策的理由に過ぎず、「公正な税制」という理念からはほど遠いものだと思う。
 むしろいまやるべきことは、納税者背番号制とすべての所得を通しての総合課税制度の採用、そしてそれを基盤とした累進課税の強化だと思う。そういった措置と並行しての消費税の増税というのが、あるべき税制の姿だろう。

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 枚数の制限もあるので、投稿したのは以上なのだが、一言だけ補足しておきたい。「納税者背番号制」については、反対意見も強いようだ。「政府に個人情報が握られる」ことに対する不信感が根底にあるのだと思うが、その点は、制度の運用を厳格にすれば、十分回避できるものだと思う。そのような観念的なデメリットよりも、「税制の公正な運用」という目に見えるメリットをまず考えるべきであり、観念論による反対は、むしろ脱税に手を貸している結果になっていると私はかねがね思っている。