題詠100首選歌集(その5)

 今日も良い天気。もっとも気温は大分下がったようだ。そうは言っても、春は着実に近付いている。我が家の狭い庭の紅梅も今が盛りだ。選歌の在庫も大分貯まったので、今日は選歌集を掲載する。明日も選歌集を載せるだけの在庫が貯まるのかどうか、もし在庫が足りなければ、明日こそは自作を投稿して、「完走」ということにしようと思っている。


    選歌集・その5


001:笑(149〜173)
(暮夜 宴)傍らの愛があまりに真っ当で恥ずかしそうに夜が笑った
(TIARA)はじまりは笑顔にしよう開くたび優しい音がする物語
(みち。)溜まりこむ涙が沸騰するようにスタッカートで笑う放課後
(みつき)笑う時 君の鼻には皺が寄る それを見るのが好きで笑わす 
(天野ねい)こんなとき君ならなんて言うのかな 僕は笑っているだけだった
006:水玉(59〜85)
(海里)水玉の咲くあのシャツに一度だけ袖通そうか迷う春の日
佐藤紀子)水玉の衣装で舞へるタイ、ヒラメに仇ならずや漁師太郎は(浦島太郎物語)
(斉藤そよ)蒼白くひかる満月 わたしには もうつくれない水玉がある
007:ランチ(56〜80)
(髭彦)<メランチ>と米良とふ友の家呼びて放課後遊ぶ日々の遠かり
(風天のぼ)仕事らしい仕事をせずに揚げたてのいわしランチをふつふーと食う
松木秀)日の丸と星条旗立て同盟はがんじがらめのお子様ランチ...
(水口涼子) 午後3時あんしんふあん混じり合う主婦のランチが優雅に終わる
(虫武一俊)タランチュラの腕(かいな)のごとく「おしごと」のことを問いくる伯母叔母従兄
(ほたる)ランチよりディナーをしたい関係になれたら薄いタイツに変えて
010:街(27〜52)
(柚木 良)すくみつつ都庁の外を見てみれば街は玩具に陽は陽のままに
(鹿男)この街があんなにまぶしく見えたのもあんなにくすんで見えたのも過去
(風天のぼ)溶けたくて傘をささない日もありき魚眼レンズに映るビル街
(海里)遠き日の遠き街での思い出がただ音もなく空へ溶け出す
(都季)街なんて呼べないようなこの町で飛べない理由をまだ探してる
(原田 町) 一本松とう街の名かつてありしこと麻布十番ゆきつつ思う
(斉藤そよ) うたがいはなにもうまない うつくしく 街の灯りをにじませる雨 
011:嫉妬(26〜50)
佐藤紀子)乙姫の嫉妬なるべし玉手箱に白き煙を詰め込みたるは(浦島太郎物語)
(天国ななお)左手の感情線に表れた嫉妬深さに逆らい笑う
017:解(1〜25)
(船坂圭之介)此方よりは言へぬ訣別ならばこそ身を再誕の海へ解かすか
(じゅじゅ。)解毒剤込みでください あなたという劇薬であり媚薬の雫
(かりやす)バレンタインデーにも解雇のニュースなり雪解け道に足をさしだす
018:格差(1〜25)
(みずき)賑はひの街に格差の日日生れて白き牡丹にけふも雨降る
jonny)バーゲンの値札のついたショーケース 格差を知らぬワンコが眠る
(鳥羽省三) 国民に格差在りやと謂ふがごと元旦参賀の日の丸の波
019:ノート(1〜25)
(みずき)ノートとふ余白も筆も恋さへも破り捨てたる十八歳(じゆうはち)の海
(小早川忠義)外套を脱げばかの時君のつけしラストノートの鼻をくすぐる
(ひいらぎ)引き出しの奥にしまったあのノート終わった恋をまだ振り返れない
(ぽたぽん)ノートならいつでも見せてあげるよと誰にでも言うあなたがキライ
(わだたかし) 真っ白なノートに最初のひと文字を落とすみたいな別れのコトバ
020:貧(1〜25)
(蓮野 唯)富める日も貧しい時も知っている角の破れた家計簿ノート
(みずき)貧しさに日々白くなる小さき掌(て)よ 泣かぬ素顔に佐渡の海鳴る
(小早川忠義) 貧すれど窮する者は僅かにて満員電車に人の声なし
ウクレレ)貧乏クジばかり引いてたコート脱ぐ春一番を追い風にして
021:くちばし(1〜25)
(みずき)わたくしの宙(そら)も真冬もついばみて くちばしくるりん水を弾けり
(鳥羽省三)くちばしの黄色い秋刀魚が新鮮と妻は秋刀魚を血眼で選る
(じゅじゅ。) 空言(そらごと)をくちばしるきみ せつなくて 夢の中でも泡沫(うたかた)の恋
松木秀)くちばしに空の記憶を秘めながらさかなくわえて歩くペンギン...
(穴井苑子)どうせならドナルドダックのくちばしのようなマスクが流行ったらいい