題詠100首選歌集(その7)

 今日は雨。しばらくははっきりしない天気が続くようだ。「くしゃくしゃ」は難題だと思っていたのだが、意外に捨て難い作品が多かった。


  選歌集・その7 

006:水玉(86〜110)
(Re:)ミッキーとミニーみたいになりたくて水玉模様のスカートをはく
(ほたる)カラフルな夢を見たいの水玉はマーブルチョコの色のパジャマで
(青野ことり)紺の地に白い水玉 雨あがり 裾を濡らして空を蹴散らす
(惠無) 不規則な水玉ならぶフリースにいびつな雪玉従えてゆく
(ゆら)水玉の水風船をもてあそぶ指に噛みつきたい星月夜
(TIARA) 雨がもし桃色ならば誰もみな恋したような水玉になる
009:ふわふわ(52〜77)
(マトイテイ)ふわふわとさまよっているこのよるにさむくはないよねぼくがいるから
(美久月 陽)ふわふわのたまごやきからはじめようぼくがあなたをゆめからさます
015:型(26〜50)
ウクレレ) 髪型を変えたくらいで性格は変わらないって知っているけど
(伊藤夏人) どうせまた振り回されてしまうのにB型ばかりに出会うA型
024:天ぷら(1〜25)
(みずき)天ぷらと冷やかした日のなほ遠く学生街と同じ夏の陽
jonny) 悲しみにころもをつけてさくさくと歯ごたえのいい天ぷらにする
(小早川忠義) どんぶりの蕎麦の上なる天ぷらにつゆのしむるを待つ夕まぐれ
(ひじり純子)タケノコにタラの芽春菊フキノトウ春を集めて天ぷらにする
025:氷(1〜25)
(船坂圭之介)戯れ言の一つになれがかかづらふ夜は「氷室」のごとき静寂
(みずき)氷山の一角くづれ埒もなき 踊る会議のあとの虚しさ
(ひいらぎ)かき氷食べて笑ったバス停でほんとは君を好きだったかも
026:コンビニ(1〜25)
(みずき) 雨あとの水になる影コンビに滑りこみたる真夜の静けさ
(小早川忠義) 子を成さぬ日常なれどコンビニの鬼打ち豆は忘れず買へり
(鳥羽省三) コンビニは真夜を灯して煌々と夢失ひし僕を誘ふ
(星野ぐりこ) 十五歳 その一瞬が貴重だと知らずに語る深夜、コンビニ
佐藤紀子) 父母の墓を見つけし郊外に夜を明るきコンビニ幾つ
027:既(1〜25)
(穴井苑子) 既視感がある街なのか来たことをすっかり忘れている街なのか
(詩月めぐ)初めての街にあなたがいるだけで 既に知ってる地元になった
028:透明(1〜25)
(みずき)透明はただ夢のやう 明け方の玻漓はすずろに雪を降らしぬ
(ぽたぽん) 今捨てた怒りは燃えないものだから半透明のゴミ袋の中
(夏実麦太朗) 昔からよく知っている頃合でピンクレディーは透明になる
029:くしゃくしゃ(1〜26)
(船坂圭之介)歯冠さむく嵐通せりくしゃくしゃの老期の涯のひとり旅立ち
(蓮野 唯) 透明なビニール袋くしゃくしゃと音立て風が嘲笑ってく
(アンタレス)くしゃくしゃに丸めて渡すハンカチに孫のみやげのドングリの有り
(みずき)くしやくしやに泣きし記憶の鏡もて蝶舞ふけふの羞(やさ)しさ映す
(ひじり純子) わたくしの髪くしゃくしゃと乱暴にまさぐる人に愛されている
(星野ぐりこ)幸せであったと思う 目覚めれば枕元にはくしゃくしゃの夢
030:牛(1〜25)
(ひじり純子) 母親と離されミルクを飲む子牛心細げに瞳潤ませ
(ひいらぎ)牛丼を食べる横顔盗み見て友達以上になれる日を待つ
(夏実麦太朗)おもむろに樫の首枷はずされて解き放たれた牛ののろさよ