題詠100首選歌集(その22)

 桜の開花宣言の後花冷えが続いた。今日やっと満開宣言があったようだが、我が家の近くの桜は、まだ7分咲きといった感じだ。明日はお花見日和とか、近場の桜をブラブラと見て歩こうかと思っている。


       選歌集・その22


006:水玉(187〜211)
(やや)奪いたくなる夜 ふかくブレスして水玉もようの空をみあげる
(須藤歩実) そのことを言い終えないまま春がきてフロントガラスにのこる水玉
(田丸まひる) ゆるされてしまいたくない寄り道のレインブーツの赤い水玉
012:達(134〜159)
(萩 はるか)達しない背伸びだらけの毎日にまなじりきつくアイライン引く
(ぱぴこ)憧れを夏に焼かれて僕達は過ぎた祭りのうちわで扇ぐ
(美木)口だけは達者だなんて人前で言われ照れてることに照れてる
(宮田ふゆこ)達観も楽観もせずフルーチェのためのミルクをきちんと量る
(流水) 喉元を過ぎて熱さを忘れたら友達言葉で話す関係
014:煮(128〜152)
(ことり)さびしさを煮詰めたらきっと夕焼けの色したジャムになるかもしれない
(若崎しおり)煮詰めたら煮詰まっちゃってさあどうする恋も家庭もカレーも嘘も
(流水)煮こごりが冷えて琥珀になるならば言えない言葉閉じこめておく
(湯山昌樹) ぐつぐつと煮て味がよくしみたころ一年が終わる 学級(クラス)のさだめ
017:解(106〜130)
(太田ハマル)結び目を解いて膨らむ木蓮の匂いわたしの春が目覚める
(萱野芙蓉) もどかしく解く手にすこしさからつて顔色を見るわたしはずるい
(松原なぎ) 補助線として透明なあなたの瞳 椎骨ひとつずつ解かれる
018:格差(106〜130)
(太田ハマル)お互いをもっと知りたくなった頃ふたりの格差をそっと差し出す
野州)声高にいうときに捨ておかれゐるものらはありて改革、格差
(A.I) 迷ひ鳥 行けど戻れどうすらひの格差社会の広がるばかり
022:職(76〜100)
(祢莉)待ち合わせ場所にはいつも何度目の職務質問受けている君
石畑由紀子)熱病に抗えぬまま君に手をのばす殉職への序章(プレリュード)
(花夢)ひっそりと職場のなかに湧いている気泡のことをあなたに話す
041:越(27〜51)
ウクレレ)一線を越えた暗闇モノラルのとても危険な安全地帯
(久哲)ガムテープで緊縛されて諦念の殉教者めく引越荷物
(はしぼそがらす)三越の黄ばんだ紙に包まれて眠るは恋敵(ライバル)の引出物
042:クリック(26〜50)
ウクレレ)クリックはほどほどにしてそんなにもわたしを開けてどうするつもり
(行方祐美) クリックの音の重さが窓濡らしさんざんと降る春の前線
(詩月めぐ)簡単に終わりにできる恋なのに 震える指が拒むクリック
070:CD(1〜25)
jonny)欲しかったCD一枚買ってから探して歩く似合いのワイン
(みずき)CDの回りし箱が歌ふ夜へ春恋ふ心そつと採りだす
(船坂圭之介) 重ね来し年月のその細き背に鳴るこがらしのごとき CD
佐藤紀子)浦島の昔話のCDを孫に聞かせて我も聴き入る(浦島太郎物語)
(minto)懐かしの曲に癒しの曲もあり今日の気分にCD回る
071:痩(1〜25)
(鳥羽省三) 池水に痩身われのかげ落ちてホテイアオイの今闌けむとす
(みずき)痩せてゆく腕も心もこの恋も梅雨のあとさき濡れて小寒
(梅田啓子)痩せた胸にいくたび抱かれしことありや遺影の父がけふもほほゑむ
(minto)好きなもの少し控へて痩せやうと決心しをり開花予報に