題詠100首選歌集(その32)

 ゴールデンウィーク半ばになって、選歌もやっと最終題の100に届いた。もっとも、二重投稿もあるので、実質は25首に届いてはいないのだが、主催者ブログのトラックバック数に愚直に従っての話である。
 今までがどうだったのか調べてみたら、題100が25首に届いたのが、平成18年5月1日、19年7月9日、去年が6月11日になっている。去年、一昨年よりは大分早いが、今年はスタートが1月早かったので、それを計算に入れれば、去年とはほぼ同じ、18年よりはかなり遅く、19年よりはかなり早いということになるのだろうか。
 このゴールデンウィークで投稿が増えるのが楽しみでもある。


     選歌集・その32


002:一日(250〜276)
(nnote)たましいは連なり消える春宵へしゃぼん玉追い終える一日
(kei) すし詰めの遅延電車はゆっくりと客の一日(ひとひ)を吐き出している
(みぎわ) 脛長媛にあらねど一日(ひとひ)の仕舞ひ湯に静脈瘤の下肢を踊らす
(ちりピ)一日をソの音で締めくくるため枕カバーを水色にする.
021:くちばし(126〜151) 
(沼尻つた子) 内診用金属器具のくちばしが冷たくて春を嫌いになった
(間遠 浪) 「くちばしはあひるのからだ持たされてつめたいままがいいと言ってる」
026:コンビニ(104〜128)
(ほたる)温度差を確かめたくて手をつなぐ夜更けのコンビニまでの直線
(沼尻つた子)コンビニのおでん汁色のパンストに限ってなかなか伝線しない
(新野みどり)コンビニでミネラルウォーター買ってみる都会の孤独を忘れるために
092:夕焼け(1〜25)
jonny)夕焼けを見ても何にも感じないような男の会議は続く
(夏実麦太朗) あまりにも美しすぎる夕焼けに俺一人でもいいと思った
(八朔)我が裡に色づくものの衰えてふいに冷えたり夕焼けの空
(梅田啓子) 静脈の浮く手に黒き日傘さし夕焼けのなか橋わたりゆく
(穴井苑子) 夕焼けに背中を向けて夕焼けに照らされているものを見ている
(柴田匡志)日の沈みて部屋に夕焼け射しておりレトルトパウチの封を開けたり
093:鼻(1〜26)
(夏実麦太朗) マスクしている人見るとその人の鼻のかたちがやけに気になる
(梅田啓子) 全共闘世代で五黄の寅うまれ鼻つぱしなら誰にも負けぬ
094:彼方(1〜25)
(鳥羽省三) 彼方此方(をちこち)の鬼遣る声に怯えつつママが目当てのスナックに行く
(梅田啓子) 厭ひしにまた彼方より現れて女はわたしの心を擾(みだ)す
096:マイナス(1〜25)
(八朔) 憎しみは僕を護ってくれたけど愛の預金はずっとマイナス
(ジテンふみお) 砂時計くびれた場所は反されてプラスマイナス戸惑う微熱
098:電気(1〜25)
(鳥羽省三)電気椅子に坐らせられたと父が言ふ! 矢吹歯科医の電動椅子か?
(船坂圭之介)闇深く冬の夜は更(た)く午前零時待ちし終電気ままに来たる
(梅田啓子)推敲をしつつ林檎の皮をむく電気仕掛けの手のあるごとく
(チッピッピ)電気消し夢の世界へ微睡めば ワープ航法 朝がもう来る
099:戻(1〜25)
jonny)戻れれば戻りたいかと問う僕に父は応えず遠くを見てた
(アンタレス)再びは戻れぬ道と知り乍ら疎かにせし過去をひきずる
(みずき)戻りたき日の数あれば今日もまた耳奥(じあう)に虫のいぶせくも啼く
(船坂圭之介) 駆け戻る脚持たぬ身にあかあかと燃ゆる想ひの月は中ぞら
100:好(1〜25)
(夏実麦太朗) 焼きたてのベルギーワッフル妻が食い昨夜のお好み焼きわれが食う
(船坂圭之介)ただよふは現(うつ)し身あらず白薔薇の香も好ましきあらぬ世の母
(みつき)好きという理由ひとつで結ばれて今年も同じさくらを見てる
(ジテンふみお)またいつかお好み焼きを食べる日は楕円でいいと思う新緑