題詠100首選歌集(その46)

<ご存じない方のために、時折書いている注釈>

 五十嵐きよみさんという歌人の方が主催しておられるネット短歌の催し(100の題が示され、その順を追ってトラックバックで投稿して行くシステム)に私も参加して5年目になる。まず私の投稿を終えた後、例年「選歌集」をまとめ、終了後に「百人一首」を作っており、今年もその積りでまず選歌を手掛けている。至って勝手気まま、かつ刹那的な判断による私的な選歌であり、ご不満の方も多いかと思うが、何の権威もない遊びごころの産物ということで、お許し頂きたい。
 主催者のブログに25首以上貯まった題から選歌して、原則としてそれが10題貯まったら「選歌集」としてまとめることにしている。なお、題の次の数字は、主催者のブログに表示されたトラックバックの件数を利用しているが、誤投稿や二重投稿もあるので、実作品の数とは必ずしも一致していない。


        選歌集・その46


011:嫉妬(231〜255)
(文月育葉)ぎちぎちと嫉妬の鎖が絞めつける もうスキップで会いに行けない
(フワコ)メレンゲのような軽さのほどほどの嫉妬は出しても受けても甘い
016:Uターン(207〜231)
(龍庵) Uターン繰り返しては幸運の女神の後ろ髪を探した
(しろうずいずみ)Uターンするかのようにふりむけば僕をみている君がわらった
(斗南まこと)感情がUターンする昼下がりあなたのためには泣かぬと決める
(つばめ) 帰るべき場所があるゆえUターン車列に赤き光のひとつ
021:くちばし(177〜201)
(佐原みつる) くちばしの黄色いものがやって来て何か話している昼下がり
(ワンコ山田) とぶものはくわえられるかくちばしに水平環のひえたなないろ
026:コンビニ(154〜178)
(兎六)逃げ出したわけじゃないけどコンビニを数えるような夜のドライブ
(若崎しおり)ポンジュースぎゅっと握ってコンビニの酔いどれあしのミュールのかかと
(やや)届くはずないメール待つコンビニの灯りが朝にまぎれこむまで
050:災(76〜102)
(風天のぼ) 災難に合うが何ゆえよきことか冥き傘へと雨の落ちくる
(村木美月)わだかまりつつ逢いにいく絡まった言葉はさらに災いのもと
062:坂(52〜76)
(新田瑛)ゆるやかなくだり坂道自転車を漕がずに進む あしたから夏
(井手蜂子)この次は下り坂らし地下鉄の勾配心地良き帰り途
(ゆき)をのこには決してわからぬ上り坂ながくかなしき女坂ゆく
(ぷよよん) 「坂の街に引っ越しました。」消印の地名は雨で見えないハガキ
064:宮(51〜75)
(西野明日香)ひとり来て暮れゆく春を見届けむ四条大宮烏丸あたり
(ゆき) 橘の小島の契り千年経り匂宮よいづこにおはす
(tafots)宇都宮美術館から採ってきた松ぼっくりに絵葉書を差す
(流水) 恨み言ひとつも言えばよかったと宮益坂口くぐるたび愚痴
066:角(51〜75)
(柚木 良)内角に甘く入った告白が鋭くショート頭上を越える
(七十路ばば独り言)秋立てば鹿寄せの笛飛び火野に流れて角切る儀式始まる
(原田 町) 政争も小ぶりになりて往年の三角大福その面構え
(tafots)青空の下に読むには偽善めく角川文庫のパステルカラー
081:早(26〜50)
(はこべ) 紫陽花の葉が競い合うみち抜けてすこし早まる梅雨に会いたり
陸王) 文盲のオモニは「早くきてねぇ」としたため里は若芽の香り
(羽うさぎ)泣けるほど空が青いね こんな日は紙ヒコーキの早退届
(ひいらぎ) あきらめが早過ぎたから後悔が残るんだろう雨音を聞く
(KARI−RING) 空は雨日の暮れるのが早い日はきみの隣で日誌を書こう
083:憂鬱(26〜50)
(ことり)どこまでもすっからかんの青空が余計にわたしを憂鬱にする
(ふみまろ)憂鬱の朝をかさね着するように僕らの旅に同じ雨ふる
(のびのび)逢いたくないわけじゃないのに憂欝な気分で書き込む土曜の予定