題詠100首選歌集(その67)

 最終題もやっと3巡目に達した。これからどこまで伸びるのか楽しみだ。例年、完走者だけを対象に百人一首を作っているので、完走者が100人をある程度超えないと予定が狂うのだが、この分だとまず問題ないだろうと思う。


             選歌集・その67


021:くちばし(228〜253)
(泉)くちばしに挟まれ蚯蚓ねぢれけり生きむがための抵抗として
(vanishe) 山峽に霧はまよへりくちばしのあかき鶺鴒そらにはなてば
(冬鳥)ビルに映る大空をゆく生きもののくちばし強く光る 冬ざれ
070:CD(104〜128)
(都季) あの曲が流れて君が溢れ出すCDの裏側の虹から
(吉里)レコードと棄ててしまった想い出がまた甦るCDかけて 
091:冬(51〜78)
(新田瑛)昨日から胸の内部が痛むのはもうすぐ冬が来るからですか
(萱野芙蓉) こんな色だつたな失くした耳飾り冬の陽のなか鳴るオルゴール
093:鼻(52〜76)
(新田瑛)嘘をついたピノキオは鼻が伸びました わたしは豆を煮込んでいます
(nnote)鼻先が初秋にふれる早朝の路地裏猫と駅までの道
ウクレレ)おもちゃ箱の一番底で笑わずにひしゃげて眠る鼻ヒゲ眼鏡
094:彼方(51〜76)
(西野明日香) 彼方より射す陽の強さ躱すごと向き合わなかったメールをひらく
(天鈿女聖)室伏の力を借りてケータイを空の彼方へ捨ててやりたい
(原田 町) 海も山もはるか彼方の街に買う丹波の栗や沖縄もずく
(萱野芙蓉) 彼方から来て彼方へと去る波に濃くなりすぎたわたしを逃がす
095:卓(51〜76)
(西野明日香)ひとひらは色保ちつつ落ちてゆくゆるい陽の射す卓上の薔薇
(中村成志)手遊び(てすさび)の花占いの花びらのごとく欠けゆく円卓の席
(髭彦)円卓の歴史彩る騎士たちよ中華料理よ回転寿司よ
(ぽたぽん) 父の背が小さく見えてくるにつれおとなしくなる隅の卓袱台
(原田 町) そもそもは江川 卓の入団が巨人嫌いのきっかけなりき
(萱野芙蓉)卓上の秋の薔薇(さうび)のくれなゐの棘、拒みつつひとを恋ふ色
096:マイナス(52〜77)
(西野明日香) マイナスをまた引きながら土砂降りを救えぬ手のひら差し出している
(萱野芙蓉) 母の言ふわたしにとつてマイナスとなるものみんなきらきらきれい
097:断(51〜75)
(nnote) 遮断機の向こう側からゆく夏が買い物袋を下げて見ている
(新田瑛) 「とりたてて言うほどのことじゃないけど」と断ってから話しはじめる
098:電気(51〜77)
(西野明日香)気がつけば電気に生かさるこの街で香のみにして虫の音聞けり
100:好(51〜75)
(イマイ) 一月の光は影も照らし出しきみの帽子に好きとささやく
ウクレレ)百均で好きなだけ買うしあわせの水羊羹はほどよく甘い