題詠100首選歌集(その69)

         選歌集・その69


008:飾(280〜304)
(みなと)窓ぎわに飾るものとて数えれば花/金魚鉢/ありふれた日々
今泉洋子)まるめたる餅飾り終へ真ん丸き心となりて新年迎ふ
(佐山みはる)「ドーイドーイ」の掛け声に曳かれゆく船のみおしに花の飾られてあり
(Makoto、M) 重なりし木の葉の化石飾られて面談室に冬の陽が入る.
(蜂田 聞)箱書きに「文久」とある飾皿 粘土の寿司を載せて遊びき.
(青山みのり) 飾らない猫のしぐさをおもわせる十六才の朝のあいさつ
016:Uターン(257〜281)
(春畑 茜) Uターンとふはすなはち逆戻り辞林のうへに眼鏡をはづす
(泉) Uターンとて戻る場所もはやなくゆきたき処(とこ)がもどりたき処(とこ)
(日向奈央) 前進とUターンとの違いすら見つけられないままのくちづけ
(vanishe) まよなかの驛にくるまがはしりきてUターンしてまた歸りけり
029:くしゃくしゃ(203〜227)
(ちりピ) くしゃくしゃとまるまる子猫のためにあるひなたみたいな日曜の午後.
030:牛(207〜232)
(ちょろ玉)偏見はないけど牛はいつだって左を向いてるような気がする
(内田かおり)尾を振りて牛はただ立つ山際に落日の朱沁みて秋行く
061:ピンク(130〜155)
(ワンコ山田)まだ他人でいたい横顔ほお紅はピンクの雲のかけらひとすじ
(花夢)遺された買い物メモをピンク色の蛍光ペンでゆっくるなぞる
(TIARA)満月に溢れる心抱き合わせシェリーピンクの夜に溺れる
062:坂(128〜152)
(花夢) ひとりぶん生きられるだけの買い物をして夕暮れの坂道をゆく
073:マスク(101〜125)
(ちょろ玉) 根っからの美人は何でもよく似合う マスク・跳び箱・バスケ部の彼
075:おまけ(102〜127)
(美木)この話おまけだけどと言っている実は一番言いたい話
085:クリスマス(76〜100)
(萱野芙蓉)約束はとほくてあをいクリスマスプレートに降る雪を見てゐる
石畑由紀子)クリスマスのやさしい嘘で生き延びたこどものような恋をしている
(遥遥)少しだけ君と歩いた日を思うクリスマスには雪が降ったね
086:符(77〜101)
(萱野芙蓉)戸惑ひの九月は休符、夏の熱が残るあひだはひとりで眠る