オバマ・USA(スペース・マガジン1月号)           

 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。


      [愚想管見]   オバマ・USA              西中眞二郎


 オバマ大統領の誕生前後、福井県の「小浜市」が大はしゃぎをしたという話を聞いた。長崎県には小浜温泉があり、最近までは「小浜町」もあったのだが、昨今の合併ブームで誕生した雲仙市の一部になってしまった。小浜町は、古くは福島県兵庫県にもあった。この種のモジリやコジツケによるはしゃぎぶりを苦々しく思っている向きもあるようだが、この手の罪のないアソビは、私は決して嫌いではない。
 大分県には、宇佐神宮で有名な宇佐市がある。「宇佐」をローマ字で書けば「USA」となる。宇佐市の製品を海外輸出する場合、産地はどう表示すれば良いのだろうか。「made in USA」と書いたのでは、虚偽表示だと思われる場合もあるかも知れないと思ったりする。
 鳥取県には、羽合町があった。羽合温泉のある町なのだが、発音は「ハワイ」町である。もっともこの町も最近の合併で湯梨浜町と名前を変えてしまった。


 消えて行った町名もあるが、逆に新しく誕生した地名もある。島根県木次町などが合併して、「雲南市」が誕生した。中国の雲南省と全く同じ名称である。木次町は以前、合併を契機に「雲南木次町」と称していた時期もあったが、その後ただの「木次町」に名前を戻してしまったので、「雲南」は久々の復活である。出雲の南という意味なのだろうし、おそらく雲南地方という呼称が地域に定着しているのだろう。
 中国には北京や南京がある。日本には東京があり、京都市西京区もある。古くは山口市が西京という異名を持っていた時期もあり、山口市には、西京銀行西京高校も現存している。かつて北九州市が誕生した際には、西京市という名前も有力候補のひとつだったらしい。
 中国には海南島があり、和歌山県には海南市がある。徳島県には最近まで海南町があったが、合併により姿を消した。海南島の西のトンキン湾は漢字で書けば東京湾だったはずだが、最近ではこの表記はされていないようだ。


 埼玉県の鳩山村(現・鳩山町)は、昭和30年に亀井村と今宿村の合併により誕生した村だが、両村の中間にある「鳩山」という地名を村の名前にしたとのことである。その際、記念として当時の鳩山一郎総理に書を依頼し、その「友愛」との書が今も役場内に掲げられていると聞く。現在の鳩山総理も、以前鳩山町役場を訪問し、その書と対面したことがあるとの話だ。人名、地名ともに比較的珍しいものだから、何か関連があるのかと思っていたのだが、どうも直接の関連はないようだ。
 愛知県には武豊町がある。人口4万人を超える大きな町である。競馬の武豊騎手とは関係ないようだが、名前が取り持つ縁で、武豊騎手が一日町長を務めたことがあるのだそうだ。多分武豊騎手のファンも多いのではないだろうか。


 足利市と足利氏のように直接の関連があるケースよりも、このような偶然の一致の方が面白いような気がしないでもない。

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 明けましておめでとうございます。早いものでこのコラムも6年目に入ります。至って勝手、かつ、無粋なコラムですが、今年もよろしくお願い致します。
(スペース・マガジン1月号所収)