題詠100首選歌集(その2)

        選歌集・その2


003:公園(1〜94)
(tafots)真夜中が照らされている 公園の廃パイプ椅子の影の黒さよ
(船坂圭之介) 妻在らぬ身をさむざむと晒しつつかたぶく月を公園に見つ
(晴流奏) この狭き君と遊んだ公園が世界の全てだったあの頃
(映子)雪音の軋む足あと 光らせて 想い出たどる 白き公園
(hjr)公園のパーキングでのくちづけとシャツの汗ばみひなたの匂い
(はこべ) ブランコの鎖の冷たさ手に残り黙ってこいだ夜の公園
(新井蜜) 公園のベンチの僕の手の中で眠つたきりの携帯電話
(こなつ)公園の昼の歓声聴くような ふうわり軽き雪が舞う夜
(酒井景二朗) 公園の砂場に魔法陣を書き猫の國への扉を開く
野州)帰らずに済む旅のこと考へるベンチがひとつ公園にある
(青野ことり)公園は小さくなってあのころとちがう瞳の子らをころがす
(橘 みちよ)ブランコの雪に埋まり公園も遊具もしんと冬眠しをり
(南雲流水) 公園の砂場に埋めたビー玉はまだ透明で蒼いだろうか
(藤野唯) 土曜日はよそ見をしよう公園にバドミントンを持って出かける
(蓮野 唯)小さい手つないで走った公園で寄り添い続け暮れる晩年
004:疑(1〜79)
(伊藤夏人) 余りにも疑惑の数が多すぎて今日も笑って許してしまう
(晴流奏)疑いは眠れぬ夜にやってくる返信の無い君へのメール
(夏実麦太朗)目に見えるものの全てを疑えば空がぱっくり割れたりもする
(ひじり純子)感情は折れ線グラフの上下にて疑心暗鬼を飼いならしている
(黒崎立体)空へ舞う枯れ葉はたましいの形 生きてる自分を疑ってみる
(みずき) 疑ひは虚しきものとあの夏のこころ細やぐ海はもう無い
(マメ)剥かれても何も残らぬ玉ねぎの悔しさ募る疑いの日々
(はこべ)疑問符が二つ並んだメールには返事に迷う告白があり
(冥亭)何くわぬ顔をしてゆく人混みにわれにはわれの疑惑ありけり
陸王)一枚の領収書から膨らんだ猫の尻尾のような疑問符
(笠原直樹)疑りや妬み嫉みを聞く君の瞳に暗き緑がきざす
(新井蜜) 少しだけ真実を混ぜ疑いを持たれたときの逃げ道とする
(駒沢直) 疑えば疑いかえす闇があり手の冷たさで測る真実
(れい)赤い実を食べたコトリは赤くなると疑わなかった七歳の夏
(チッピッピ)伸ばす手が繋がれること疑わず娘と歩く川縁の道
005:乗(1〜62)
(夏実麦太朗) 何となく緑の電車にとび乗れば青い電車が追い越してゆく
陸王)乗るバスを間違ったひと 乗車券失ったひと 旅に出ようか
(チッピッピ)どうしても父に桜を見せたくて窓際に乗る遺影を持って
006:サイン(1〜56)
(晴流奏)気まぐれな君のサインを見逃して気付かぬ振りの恋の駆け引き
陸王)秘め事のサインを決めていないから言わなくていい繰り言ばかり
(龍庵)窓をうつ雨の雫が君からのサインに見えてカーテンをひく
(綾瀬美沙緒)ドリカムの サインを真似て ブレーキを 踏んだりしてた 不器用な恋