題詠100首選歌集(その3)

 久々の上天気。今日は日差しが温かい。


     選歌集・その3


007:決(1〜60)
(みずき)決心は風化したまま愛憎の季節の見えぬ青き目蓋(まなぶた)
(冥亭) 決別を迫れる汝(なれ)の首筋にふりし歯形をなぞりていたり
(橙)ずっともう前から決めていたんでしょうあたしのいない未来予想図
(チッピッピ) 決めかねる我の心を見透かしてまっすぐに飛ぶ水鳥の群れ
(新井蜜)決められずゆつくり歩く春あさき野辺の冷たき光のなかを
008:南北(1〜57)
(晴流奏)大空にチョークで描く南北を分かつ飛行機雲の直線
(映子) 南北の極に挟まる この星の みどり野に生き 蒼きに生きる
(nene) 東西と南北が交差する地下をお仕事用の顔して歩く
(船坂圭之介)南北に走る冬虹 矍鑠と在りし日の父見ずやその色彩(いろ)
009:菜(1〜52)
(tafots) 黄蝶ニ頭菜の花畑に紛れゆき友だちはまだだぁれも来ない
(じゅじゅ。) 大きめの傘にポツンと花菜雨いつも遅れて来るひとを待つ
(シホ)スーパーで 菜の花を買う 外は雪 一足早い 春の訪れ
(菅野さやか)不意打ちの一人の夜に菜箸の先をなめなめ味わう煮付け
(水絵)菜の花の乱れ咲きおり沈下橋 水面静かに屋形船ゆく
陸王) 肩ならべきみが野菜をカゴに入れぼくが支払うだけのしあわせ
伊藤真也)フラミンゴ立ちの流しに差す茜 菜箸ですする緑のたぬき
(天野ねい) 春はまだ遠いようです スーパーで菜の花サラダひとつ買う夜
(龍庵)どうしても風に揺られる菜の花のことしか思い出せない別れ
010:かけら(1〜49)
(じゅじゅ。)百群(びゃくぐん)に輝きながら舞い降りるキミのかけらを天使と紡ぐ
(みずき)傘を持つ少女の翔けて水溜まり飛ばすかけらに雨白く降る
(間宮彩音)制服は部屋にかけられそのままに卒業の日に止まった時間
(詩月めぐ)まだ残る好きのかけらをかき集め君のかたちに戻したくなる
(コバライチ*キコ) あちこちに散らばっている思ひ出の欠片(かけら)を集め抱きしめる夜
(れい) 幸せのかけらをひとつ拾ったら胸のピースにはめ込んでみる
(冥亭) とむらいの鐘のみ響く夕まぐれ骨のかけらの蒼く光れり
011:青(1〜35)
(夏実麦太朗) ゆくりなく青い画面は現れてひとは眩暈というものを知る
(みずき)青き日の情熱失せしけふを弾くなみなみ寄せる春の心よ
(飯田和馬)古の青のかなしさまさびしさ平たき石は雨に濡れおり
(間宮彩音)太陽が沈んだあとの空を塗る群青色のクレパス持って