題詠100首選歌集(その12)

 このところ寒い日が続く。今日は午後15℃まで上がるという予報で出掛けたのだが、結局10℃以下の気温で終わってしまったようだ。すっかり騙されてしまった。


           選歌集・その12


003:公園(149〜175)
(一夜)公園でお砂場グッズ取り合って 泣いた吾子のせ揺れるブランコ
(みち。)だれにでもやさしい春の公園のようなかたちで抱きしめられる
(斗南アキラ) 公園の隅でひっそり咲く花を見つけてしまった 君に、会いたい
008:南北(110〜135)
(本間紫織) 君という海原めぐる旅に出る南北線のゆりかごの中
(南雲流水) 南北の自由通路で渡されたホワイトティシューと雨の湿り気
039:怠(1〜27)
(中村あけ海) OLを怠けたい日は真っ黒な80デニールのタイツです
(古屋賢一)だいたいが怠惰な人は回文を思いつけない だいたい怠惰
(リンダ) 怠惰なる過去の封印とくようにビル開発は雨でも進む
(コバライチ*キコ) 包丁もときに怠ける日もありき茄子のへたすらきれいに切れず
040:レンズ(1〜27)
(tafots)テレビ塔 連なってゆく荒れ畑を魚眼レンズで描く夕焼け
(船坂圭之介) 憎まれてゐるこころ在り潔斎のごとく眼鏡のレンズを磨く
(リンダ) 湯気ごしの曇ったレンズ拭きもせず立ち食い蕎麦をすする駅前
041:鉛(1〜27)
(中村あけ海) 複写紙の一ページ目にごく弱く鉛筆で描くいびつなかたち  
(髭彦)鉛管の破裂恐れる日々ありき都心に住めど冬の厳しく
(間宮彩音)鉛筆を削り忘れた算数の時間はなぜかゆっくり進む
042:学者(1〜26)
(夏実麦太朗) モニターのQuickTimeの枠のなか学者になりし友うごきおり
(髭彦) 学者にはつひにならねど時としてからかはれたり学者ですねと
043:剥(1〜27)
(夏実麦太朗) 剥がされた光GENJIのポスターのなかなるひとのそれぞれの今
(中村あけ海)ビル中の交通安全ポスターを全部剥がせば階段は夏    
(みずき)剥く指の先するすると滑りたるぺティナイフへ秋のジン酌む
(船坂圭之介)夢をまた剥離されしや屈まりて眠るロシアン・ブルーの眼の仔
044:ペット(1〜25)
(夏実麦太朗)何をするでもない春の休日にペット売り場の犬を見ている
(tafots) バスが来なくて貼り紙を読み尽くす 迷子のペット増えゆく街で
045:群(1〜25)
(tafots)雲梯を群青色に塗りこめて七月末の校庭静か
(みずき)群集をはぐれる怖さ水無月の記憶の底にひとり迷ひし
046:じゃんけん(1〜27)
(tafots) じゃんけんで最初にチョキを出す人はひねくれ者と言いあう五月
(中村あけ海) じゃんけんで負けて庶務課に来たのよと微笑んでいる澄子先輩
(みずき)じゃんけんに負けた涙が夕光に浮かぶ 八月をさな日のこと
(船坂圭之介)春来しや窓のかなたにそれぞれの調べそぐはぬ「じゃんけん」の声
(コバライチ*キコ) いつだって要領のよき姉の勝ちピアノもゲームもじゃんけんすらも