題詠100首選歌集(その34)

選歌集・その34


006:サイン(228〜252)
(きり) 今はもうサインコサインタンジェント呪文のようなものになりけり
(やすまる) 縫い上げたばかりの島の白浜に速く小さくサインをしるす
(moco)七色のサインペンでは描けない空いっぱいの七色の虹
013:元気(228〜252)
今泉洋子)日の本の元気失せゆく今の世にあるまじきことに慣れつつ生きる
(きり) 元気です そんなジャケットタイトルのレコードをなぜ捨てたと悔やむ
(いととんぼ)元気かと父は無骨に問いかけて まぁ元気だと無骨に返す
016:館(159〜183)
(ショージサキ) カフェラテを右手で飲んで片方で手を繋ごうか 図書館の午後
(秋篠)本棚で 見失わぬよう あとを追う 静かな図書館 密やかな恋
(田中彼方)折り紙はエンゼルフィッシュに、この部屋は水族館に変わる、雨の日。
022:カレンダー(127〜155)
(黒崎聡美) カレンダーいちまい捲ればふわふわとふくらんでいる春色がある
(ちょろ玉) 向日葵と麦わら帽子の少年が生きていたあの夏のカレンダー
(海音莉羽) カレンダーに書き込む癖が消えなくて 今年も君の誕生日がくる
023:魂(130〜154)
(黒崎聡美)花冷えに魂までがしぼむようどこまでもどこまでも片隅
(祢莉)魂を分かち合うべく生まれ来る君を待ってる半月の下
029:利用(106〜130) 
佐藤紀子) 利用価値ほぼ無くなりて姿消す会葬御礼のテレフォンカード
(市川周) 届くのは利用明細・エロチラシ(ポストの精は餓死しておりぬ)
(村木美月) 女という武器利用してしたたかに火の粉を払うわたくしもいる
(丸井まき)空間が切り取られたまま止まってる利用者の居ない公衆電話
030:秤(102〜126)
(こなつ)バランスにたけたあなたの 絶妙などっちつかずは天秤の星
佐藤紀子)さそりより乙女が好きな天秤座 今宵は少し傾きてをり
(黒崎聡美)天秤のゆれ終わらせず分銅をひっそり載せて満ちるしずけさ
037:奥(76〜100)
(高松紗都子) 耳の奥たゆたう海をあふれさせざざんざざんと歩く夏の夜
(五十嵐きよみ) 奥付は昭和の日付け図書館の書架に黄ばんだ向田邦子
064:ふたご(26〜51)
(はこべ) 去年の冬きみと見上げしふたご座の惑星小さく輝いており
(ふうせん) 未来かもしれない過去を見上げてた流星群とふたごの神話
067:匿名(26〜50)
(龍庵) 匿名の批評のように突き刺さる別れた人の最後の苦言
(梅田啓子)匿名に始めしブログも三年で目が付き足つき尻尾まで生(は)ゆ
佐藤紀子)日本に一番多き「佐藤」なり 匿名性あるわが本名は
(ふうせん) 匿名で届いた花にメッセージありて二人の記念日となる