50音別に見た市町村の名称

 市町村名には、50音別に見てどのような文字が使われているのか。21年秋の1781市町村について調べてみた。
 
 一番多いのが<か>で406、次いで<し>330、<ま>315、<い>301、<お>283、<う、み>269、<た>228、<わ>225、<な>223と続く。以上がベストテンである。
 濁音と清音を一緒にして見ると、<か・が>570、<し・じ>420、<た・だ>304、<き・ぎ>233と、やはり<か><し>が優勢である。
 次に市町村名の頭の文字を見ると、
<か>140、<お>124、<い>107、<み>102、<し>98、<あ>93、<た>86、<な>82と続き、
濁音と清音を一緒にして見ると、<か・が>141、<し・じ>104、<た・だ>93、<ひ・び・ぴ>80となる。
 同様に末尾の文字を見ると、
<ま>162、<わ>132、<き>101、<う>97、<ら>93、<い>79、<た>65、<か>66、<の>64、<ん>62となり、
濁音と清音を一緒にして見ると、<き・ぎ>125、<た・だ>107、<か・が>86、<つ・づ>66、<し・じ>63となる。
 中間の文字を見ると、
<か>200、<し>188、<お>145、<が>143、<う>134、<な>124、、<ま>116、<い>115、<み、ん>104、<さ、よ>100、
濁音と清音を一緒にして見ると、<か・が>343、<し・じ>253、<さ・ざ>135、<つ・づ>109、<た・だ>104となる。
 
 こうして見ると、<か><し>は概してすべての位置で多いが、<ん>が末尾や中間で多く頭にないのは当然として、全体では中の上くらいに位置する<あ>が末尾に全くないのが面白い。また、<ま>と<わ>が末尾に多いのは、島、山、川という文字が最後に来る市町村が多いのが最大の理由だろう。
 なお、地名、人名を問わず<ら行>ではじまる言葉は極めて少ないので、<ら行>は50音の中では異分子だという第一印象を持っていたのだが、中間や末尾で<ら行>が使われている言葉が結構多いのは意外だった。

 
 ついでに、これらの市町村名が、人名や普通名詞とどの程度共通性があるか、気まぐれに調べてみた。

 まず、人名については、学士会名簿を利用した。そうは言っても数が多過ぎるので、各ページの各行の冒頭に出てくる姓だけを拾ってみた。(学士会は、旧帝国大学の同窓会ともいうべき会であり、地域的なバラつきは比較的少ないものと考えた。)
 市町村名と同じように調べたみたのだが、全部を掲載すると煩雑になるので、字数の合計中心に整理してみよう。なお、字数の総計は9,811である。
 一番多いのが<か>で623、次が<ま>で517、以下<た><し><い><お><や><ら><う><わ><と>と続く。このうち、最初の文字だけを取ってみると、<い><お><た>の順になり、最後の文字だけを取ってみると<だ><ら><ま>の順になる。<だらま>が多いのは少し意外な気もするが、<田、村原浦、山島>などの文字を思い浮かべると、判るような気がしないでもない。

 
 次に、普通名詞についても同様に調べてみた。これは三省堂の漢字表記辞典につき、同様に各ページの各行の最初に出てくる普通名詞を拾ってみた。全6,111文字のうち、一番多いのが<う>で579、次が<ん>509、以下<い><し><く><き><よ><つ><か><り>と続く。
地名や人名とはかなり違うが、普通名詞には促音や拗音が多いのが違いの大きな理由だろう。

 
 以上のまとめとして、それぞれの相関度を見てみよう。字数合計の相関係数を計算してみると、地名と人名が0.93と、極めて強い相関を示す。
地名と普通名詞の相関係数は0.62、人名と普通名詞の相関係数は0.48と、これまたかなりの相関があるが、<地名と人名>の相関度と比べれば、遥かに低い。
 なお、冒頭、末尾等、字の位置別にも3者の相関係数の計算をしてみたが、全体の数と大きな違いはない。


 以上、だからどうだという結論のない、至って取りとめもない話ではあるが、これまで漠然とイメージしていた地名、人名、普通名詞の類似点や相違点に、多少の数字的根拠が得られたような気もする。