題詠100首選歌集(その47)

 今日はひさびさの雨。気温も大分下がったようだ。それは良いとして、台風被害も大分出たようだ。皆様に影響のないことを念ずるのみ。明日からはまた暑くなりそうだ。


       選歌集・その47

005:乗(258〜283)
(星桔梗) 一瞬のジョークに乗り切れないままに あなたとの距離隔たっていく
(水沢遊美)風に乗り自由に空を翔ける夢そっと包んで朝はまた来る
(山田美弥)どこまでも逃げ続けるため文庫本片手にひとりで乗る市営バス
(振戸りく) 三乗根同士の計算問題が解けないままに秋が始まる
(いずれ) 夏終わり 旅に出ていた顔ぶれもいつものように立つ乗車位置
014:接(196〜220)
(星桔梗)ひと夏の恋に溺れて海の家君との接点ない夢を見る
(お気楽堂)昼休みきつねうどんを食べていた顔がすまして面接に来る
(睡蓮。)人生で君と我との接点は今この瞬間だけかもしれず
015:ガール(193〜217)
(お気楽堂) 男には聞かせられないこんなことあんなことなどガールズトーク
(刃月市子) さりげなくあの子と語る君のこと 本音隠したガールズトーク
(山田美弥)共通の男の悪口はずませてガールズトークの夜は更け行く
024:相撲(158〜182)
(やすまる) とりくみは続いているかだらだらと相撲中継のないまま六時
(本間紫織)駆け引きも知らずにいつも押し出しで黒星が付く恋愛相撲
(竹本未來) 窓際の何の気なしの指相撲 ブラウスはただ白く膨らむ
今泉洋子) 杳(とほ)き日のひとり相撲は一目惚れせし人を日々眩しみて見き
025:環(154〜178)
(bubbles-goto) かつて都たりし平原(パンパ)にたどり着く いま閉じられる物語の環
(A.I)ランドルト環の切れ目を当てられずスチールの椅子ぐるぐる回る
(お気楽堂) 男運金運なべて悪ければ気休めに買う瑠璃の円環
(振戸りく) 明るさは暗さと対になっていることを金環日食に見る
041:鉛(105〜129)
(草間 環)鉛筆画さらさらと描く人の手に木の香が揺れる夏も半ばに
(イズサイコ) 100色の色鉛筆で姪っ子は幸せそうな家族を描く
(キキ) 鉛筆の落書きがふと惜しくなりコピーをとってしまう金曜
054:戯(76〜101)
(中村梨々) お遊戯はまだ途中です赤ずきん「おばあちゃんちが見つからないの」
(高松紗都子) 戯言と笑いとばしてほしかった清澄白河駅二番線
(じゃみぃ)お遊戯の写真手に取りほのぼのとそんな時代もあったと笑う
058:脳(76〜100)
(五十嵐きよみ) ぬりつぶし丸めて捨てたひとことがむしろ脳裏に刻み込まれる
(ちょろ玉)驚いた君を脳裏に焼き付けてむかしの夢をあきらめに行く
076:スーパー(52〜76)
(原田 町) 駅前のスーパー閉鎖といふ噂買い物難民いよよわが身に
(橘 みちよ)スーパーの総菜に魚焼きて詰めるのみの弁当子は日々持ちゆく
(晴流奏) スーパーのお酒売り場に漂いし孤独を片手にレジへと向かう
079:第(51〜75)
(新井蜜) 落第となじられたこと思ひ出しレシピに赤い栞を入れる
(原田 町)とこどころほころびつつも第九条つくづく思ふ八月の空
(揚巻) よく熟(な)れた第三者的視点では傷もちいさなきのうに過ぎず