国会のリストラ(スペース・マガジン9月号)

 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。



     [愚想管見]   国会のリストラ      西中眞二郎


 昨今の厳しい財政状況から、国会議員の「リストラ」の話も出ているようだ。それ自体には異論はないが、問題はその内容である。


 衆参両院の比例選出議員数を減少させるというのが有力な流れのようだが、これには異論がある。小選挙区制度では、わずかな差が結果として大きな違いを生むことになる場合が多い。民意の差を過剰に反映させる結果になるのが果たして望ましい制度と言えるのかどうか、私には疑問がある。また、小政党の出番は、ほとんどないに等しい。それを補完するために比例区が設けられているわけだが、十分な補完になっているかどうかには疑問もあるし、比例区議員定数を減少させることになれば、小政党にとってはますます厳しい制度になり、少数意見の軽視につながってしまう。


 それ以外にも、小選挙区制にはいろいろな問題がある。選挙民の目から見た場合、自分の選挙区から選ばれる議員は1人だけであり、負けた政党の支持者は、国政へのパイプを断たれることになる。また、公認を得られなかった候補は、かつての「刺客」騒ぎに見られたように、極めて厳しい選挙戦を強いられることになるし、加えて政党交付金制度の分配を通して、政党首脳に生殺与奪の権を握られることになる。
 政党の公認候補以外の新人の場合、以前の中選挙区制であれば、その選挙区の4位か5位に食い込む可能性は期待できたが、小選挙区制では不可能に近い状況となる。より基本的には、細分化された地域代表という性格が濃くなり、相対的に広く浅く支持を得る候補の当選はむずかしくなり、議員のローカル化、更には小物化という傾向にも繋がって来るだろう。


 あれこれ考えると、議員数に手を付けるのであれば、小選挙区制から中選挙区制に戻した上で、定数を削減するというのが正当な方法なのではないか。


 選挙制度はさておき、国会議員は国民の代表であり、議員数の減少が正しいリストラ策なのかどうかには疑問もあり、むしろ、議員報酬の削減の方が望ましい方法だと思う。
 先般議員所得が公開された。それによれば、議員としての給与所得は1800万円台のようだが、これは税法上の給与所得控除後の「所得」であり、給与自体は、年間2千万円を大幅に上回るようだ。このほかに、月100万円の文書通信交通滞在費も無税で支給されているし、更に、議員秘書3人分の給与も支給されている。加えて、政党交付金も議員個人に分配されているケースが多いようであり、これらを合算すると、個々の議員に支給されている国費は、少なくとも年間8千万円程度になると考えても大きな間違いはないだろう。

 
「政治活動には金が掛る」という話は良く聞くが、議員の支出の大半は、「国政」のためというより、日常活動を含めた議員個人の地盤確保、更に言えば「選挙」のための費用であり、「自分の地位を保全するため」の費用ではないのか。議員の地位保全のために巨額の国費を支出することには疑問があり、国会のリストラのためには、議員に対するさまざまな支出を削減することが本筋だという気がしてならない。(スペース・マガジン9月号所収)